猫(ねこ)

第六段(抜粋)

   うへにさぶらふ御猫は、かうぶりにて命婦のおとどとて、いみじうをかしければかしづかせ給ふが、はしにいでてふしたるに、乳母の馬の命婦、「あなまさなや。入り給へ」とよぶに、日のさし入りたるに、ねぶりていたるを、おどすとて、「翁丸、いづら。命婦のおとどくへ」といふに、まことかとて、しれものははしりかかりたれば、おびえまどいて御簾のうちに入りぬ。

  説明・   宮中の御猫は、殿上人で、命婦という名で、たいへんかわいらしかったので、帝も大切にされていらっしゃった。その猫が端に出て寝そべっていたため、乳母(馬の命婦)が「行儀が悪いから中へ入りなさい」と言ったけれど、猫は日が当たっているところで眠っている。そのため、おどかすために「翁丸(犬の名前)、何処に居るの!命婦をかんでしまいなさい!」と言ったら、本当に犬がとんできて、猫はビックリして御簾の奥に逃げ込んだ。

…という内容です。

  猫に「御」がついているのは、この猫が、天皇の飼っていた猫で、天皇に仕える者として人間と同じように位が授けられていたためです。この猫は雌だったので、女の人の位である「命婦(みょうぶ)」の名をもらっていました。また、女の人が端にいるのは、外から見えやすくはしたないこととされていました。

 

 

 

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