DNA Sequence  デオキシヌクレオタチドの塩基配列決定(DNAシーケンス)

 

 DNAの塩基配列決定は、多くの種類の制限酵素の発見、マクサム・ギルバート法(Maxam・Gilbert法、化学分解法)、サンガー法(Sanger法、酵素法)の開発、電気泳動法の進歩などによって目覚しい発展を遂げてきた。すでに、ある種のウイルス、ミトコンドリア、葉緑体などのDNAの全塩基配列が決定されており、現在、ヒトの全ゲノムDNAの塩基配列を決定しようという、ヒト全遺伝子解析の世界的なプロジェクトが進行中である。

 長いDNAの塩基配列を決定するためには幾つかの段階がある。まず、決定しようとするDNAの断片をプラスミドやバクテリオファージ等のベクターにつなぎ込み、大腸菌に移入して増殖させ、十分量の試料を得る方法である。化学分解法・酵素法ともに、1回に決定できる塩基配列は数百塩基以下なので試料DNAを様々な制限酵素で消化した制限酵素地図を作製するか、一方の末端から酵素を用いて段階的な欠失を起こさせた断片を作製する。これらの断片をベクターに組み込んだ後に大腸菌に移入して増殖させて十分量の試料を得て、どちらかの方法を用いて塩基の配列を決定する。得られた幾つかのデータの末端を比較して配列の重なるところで次々と繋ぎあわせてゆき、元の試料(長いDNA)の塩基配列を決定する。これによりかなり長いDNAの塩基配列が決定出来る。これジーンウォーキング(Gene Walking)という。

 しかし大腸菌のゲノム(約480万塩基対)やヒトゲノム(約30億塩基対)のような非常に大きいDNAの塩基配列の決定はこれらの従来の方法では不可能であったが、最近の技術開発のお陰で上記のような長い配列の決定も可能になってきた。

 なお、これらの方法は配列決定の際にアイソトープを用いられてきたが、最近では蛍光色素で標識されたヌクレオチドを用いて、DNAシークエンサー及びそれと連動したコンピューター処理を併用することで自動的に配列決定を行うことが多くなっている。

1)Sanger-dideoxy法

 サンガーらが1975年にその原理を発表して以来様々な改良が加えられてきた。DNAポリメラーゼによる修復合成を利用することから「酵素法」とも呼ばれ、現在では未知のDNA断片の塩基配列を決定するのにはもっぱらこの方法が用いられている。

 この方法の原法は鋳型となる一本鎖のDNAを得るために手間のかかる方法であったが、メッシングがM13ファージをベクターに用いたことでより簡略化された。現在ではpUC18等を用い、これをNaOH等で変性させて一本鎖DNAを得て鋳型のDNAとしている事が多い。得られた鋳型のDNA、Klenow(クレノウ)酵素を用いて5’>3’ポリメラーゼ反応を行い相補鎖を合成させる。ジデオキシ法は次のような性質を利用して行われる。

1)一本鎖DNAを鋳型としてその相補鎖を合成

2)3’末端にーOH基のついたプライマー(15塩基以上)が必要

3)デオキシヌクレオチド(dNTP)とジデオキシヌクレオチド(ddNTP)の両方を取り込む。ただし後者の取り込み効率は低い。

ddNTPは3’末端にーOH基を持たないので、dNTPの代わりにddNTPが取り込まれるとそこで鎖の伸長が停止する。

 実際の反応では4種類のdNTPと1種類のddNTPに組み合わせた混合液を4種類(ddNTPにはddATP,ddCTP,ddGTP,ddTTPの4種類があるから)作り、1つの鋳型DNAに対してそれぞれの反応を行う。例えばddATPの反応の場合、A(ジデオキシアデノシン三リン酸)を取り込む際に基質としてddATPもしくはdATPのいずれかが取り込まれ、前者の場合はそこで伸長反応は停止する。後者の場合でもdCTP,dGTP,dTTP等を取り込みながら鎖を伸長してゆくが、次のAのところで同じ選択に直面する。このようにして3’末端にddATPを持つ様々な長さのDNA断片を合成することが出来る。この反応をddCTP,ddGTP,ddTTPでも行うことで、末端がそれぞれのジデオキシヌクレオチドで停止した断片を得ることができる。この時の5’末端は共通のスタート地点の蛍光標識されたプライマーである。 一方このようにプライマーに標識するのは高価であるし、プライマーの真近はプライマーの蛍光ピークのすそにおおわれて配列を読むことむずかしい。

 

 得られたそれぞれの反応液を薄層ポリアクリルアミドゲルにアプライして電気泳動を行う。短いDNA断片から次々に流れてきて、ある高さに設置されたレーザー光に当たり蛍光標識が発色する。その発色を読み取り、配列を決定してゆく。

 以下のGIF Animationは以上の説明の流れを映像を用いて簡単に示しています。ここで黒は鋳型DNA、茶色はdNTPを意味し、緑、青、黄色そして赤はddATP,ddCTP,ddGTP,ddGTP,ddTTPを意味している。しばらく眺めてみてください。塩基が取り込まれる様子がわかります!(さらに大きな図で見たい方はここをクリックして下さい。さらに大きなAnimation<約400KB>を見ることが出来ます。)  一般的には一回の配列解析で400塩基対程度から600ベースをこえる配列を読み取る。1000ベースを超える配列を読むことも可能で、このような長距離の塩基配列を1度の操作で読み取ることをメガベースシーケンスなどと呼ぶ。   

 

 

  Dye‐terminator 法

  なお、dideoxy‐terminator のほうに蛍光標識をしたDye‐terminator法が最近良く使われるようになっている。 Dyeterminator法では簡単な操作でプライマーのごく近くから配列を読み出すことができるうえ、コストと時間のかかる標識をプライマーに施す必要がないので、とくにprimer walkingによる長距離の塩基配列決定や迅速な配列決定にはメリットが大きい。 

        ーー画像(工事中)

2)Maxam-Gilbert法

 この方法はDNA断片の5’末端もしくは3’末端を32Pで標識しておき、塩基に特異的な化学反応の部分分解によって切断し、その産物をポリアクリルアミドゲル電気泳動で分離することによって塩基配列を決定する。初期のころは先述のサンガー法に比べて一般的であったが、サンガー法の改良により現在はあまり使われなくなった。

 方法としてはまず5’もしくは3’末端を32Pで標識し、これを両端の鎖長が異なるように制限酵素で切断する。それぞれの断片をポリアクリルアミドゲル電気泳動で分離し、32Pの標識のある方を回収したのち塩基特異的な化学分解反応を用いて部分分解する。つまり、Gでの分解、GとAでの分解、TとCでの分解、Cでの分解の4種類の分解反応を行う。それを電気泳動によって鎖長に応じて分離しオートラジオグラフでバンドを検出すると、末端に32Pを持つ断片のみが梯子状に見えてくることになる。これを読み取っていき塩基配列を決定する。

 

3)その他の方法

  質量分析を使う方法などが開発されているがまだ一般的にはなっていない。

 

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99/09/27 17:01