SN4TDR (4Nc-Tudor domain protein) とは

   スタフィロコッカスヌクレアーゼドメインという細菌由来の1本鎖DNA/RNAに結合するドメインをN末端側に4個並び、それに続いてチューダードメインというドメインをもつ、チューダータンパク質(Tudor Domain Protein)である。 最初にヒトの細胞にEpstein Barr Virusという細胞を不死化させるウイルスに感染した際に、核内に誘導されるホストのタンパク質、EBNA2 co-activator protein p100として報告された(1996)。 また、エンドウより110kDaの分子量を持つタンパク質(Ito et al., 1994)が細胞骨格画分(Abe et al., 1991)より分離され(Shibata et al., 1999)、構造解析の結果、このEBNA2 co-activator protein p100と同様のドメイン構造をもつタンパク質であることがわかり、その特徴的な保存的構造から4SNc−Tudor Domain protein と命名するとともに、動・植物・菌類におけるオルソログの系統学的比較を行った(Abe et al., 2003)。 また、同じタンパク質は、イネ胚乳より分離されて、アクチン結合タンパク質と報告された(Sammi-Subu et al., 2002). 植物においては、少なくとも細胞質に局在するタンパク質として研究されているが、哺乳動物では、核内の転写補助因子の役割を中心に研究されている。 現在、この遺伝子のNCBI公式名はSND1(Staphyllococal Nuclease Domain containing 1)とされている。 下図は、SN4TDRのドメイン構造の一例である。 SNc:スタフィロコッカスヌクレアーゼドメイン;TUDR、チューダードメイン。

  一方、魚類(ブリ、ゼブラフィッシュ、トラフグ)より、この4SNc−Tudor Domain proteinをコードするcDNAが分離され、阿部らによってその特有の構造に基づいてSN4TDRと名づけ、そのコードされるタンパク質を4SNc-Tudor domain protienと呼んだ(Abe et al., 2005)。 この遺伝子は、魚類においては、肝臓や卵巣に特に強く発現しており、フグ肝臓から抽出したタンパク質を、植物と同様にヘパリン親和性のカラムクロマトグラフィーにより分離することにより、102kDa のタンパク質として同定された(Abe et al., 2005)。 発現量とタンパク質量から、細胞質タンパク質であると考えられる。

図左端がペプチドのN末端である。 番号はN末端から数えたアミノ酸の位置を示す。 右端(C末端)のSNcは生物によっては、不完全だったり、存在しなかたりする。

SQ-SN4TDR Smart.gif (4002 バイト)

    SN4TDRのゲノム構造を魚類において解明し、ヒトなどの哺乳類と比較するとコーディングエキソンが24個であることと16−17エキソンの間のイントロンにLRRC4という別の遺伝子が逆向きに挿入されているという共通点がある。さらにその周辺の遺伝子の並びから、魚類が進化した際に、祖先にあったSN4TDRのゲノム領域が再編成され生じたゲノム構造がそのまま保存されてヒトにまで受け継がれている(Abe et al., 2005)。  このため、脊椎動物のSN4TDRは、cDNAにコードされたタンパク質の構造は似通っているものの、脊椎動物以外のSN4TDRとのホモロジーは低く、また、エキソンの数などのゲノム構造はかなり異なる。 魚類を含めた脊椎動物でみられるLRRC4の挿入も、魚類進化時に起こったようで、脊椎動物以外のSN4TDRのゲノムにはその挿入は見られない。 ヒト染色体上の位置は、3p21であるが、周辺の遺伝子の並びから考えると3p25領域と関連がある可能性がある。

  植物のSN4TDRに対して作製した抗体は、アミノ酸配列の相同性の低さから予想されるように魚類や哺乳類のSN4TDRと全く反応しないが、ヘパリンに対するSN4TDRの親和性が、植物と魚類でほぼ同じであることは驚きに値する。 このことは、ヘパリンに対するアフィニティに関係する性質がSN4TDRの機能と密接に関連していることを強く示唆する (Abe et al., 2005)。

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分子生物学の基礎

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