人工海水の作り方

人工海水にはいろいろな処方がありますがここに紹介するのは天然海水に近く、しかも入手容易な塩類を用いたものを紹介します。この人工海水により魚類はじめ無脊椎動物なども飼育できます。

1.組成  海水1kgを作るのに用いる塩類の量

塩化ナトリウム(食塩) Sodium chloride NaCl 28.5g
硫酸マグネシウム7水塩 Magnesium sulfate MgSO4 7H2O 6.82g 
塩化マグネシウム6水塩 Magnesium chloride MgCl2 6H2O 5.16g
塩化カルシウム2水塩 Calcium chloride CaCl2 2H2O 1.47g
塩化カリウム Potassium chloride KCl 0.725g
塩化ストロンチウム6水塩 Strontium chloride SrCl2 6H2O 0.024g
臭化ナトリウム Sodium bromide NaBr 0.084g
ホウ酸 Boric acid H3BO3 0.0273g
フッ化ナトリウム Sodium fluoride NaF 2.87 mg
ヨウ化カリウム Potassium iodide KI 0.079 mg

 

A 主要成分ミックス

       1L用  22L用
  NaCl 塩化ナトリウム 26.5 g 583 g
  MgSO4・7H20 硫酸マグネシウム7水塩  6.82g 149 g

粉体のままビニール袋などに密封し乾燥した温度変化の少ない場所に保存する。長期保存では固まる傾向があるが使用には差し支えない(溶けるのに時間がかかる)

B 主要成分ミックス(水溶液)  

         1L  
  KCl 塩化カリウム 160 g  
  NaBr 臭化ナトリウム 18.5 g  
  H3BO3 ホウ酸   5.7 g  
  NaHCO3 炭酸水素ナトリウム、重曹 44  
  Na2CO3 炭酸ナトリウム  
  NaF フッ化ナトリウム 0.63 g**  
  KI ヨウ化カリウム 0.0174 g  

* pH調整のため加えることがある。

**KF(フッ化カリウムなどの他の水溶性フッ化物で代替可能: フッ化ナトリウムは規制のため入手が難しい場合がある)

C 2価イオンミックス(水溶液)

1 L
MgCl2 6H2O 塩化マグネシウム 568 g
CaCl2 2H2O 塩化カルシウム 162 g
SrCl2 6H2O 塩化ストロンチウム   2.34 g

Note: このミックスは塩化マグネシウムに少量含まれる硫酸イオンのために硫酸カルシウム(石膏:CaSO4)の沈殿を生じる。これも、海水の成分組成の中に含めてあるので使用直前によく振り混ぜて使用すること。

 

人工海水の調合と管理

使用薬品の入手

   成分薬品のうち塩化ナトリウム(食塩)、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、重炭酸ナトリウムなどは10−20kg袋入りの食品添加物用のものを用いる。食塩は専売の20kg袋入り精製塩がよい。他は、試薬用または食品添加物用の小さい包装のものを用いる。ホウ酸やヨウ化カリウムは日本薬局方のものでもよい。 塩化ストロンチウムと水溶性フッ化物(NaFやKF)が入手困難なときは省いてもよい。ヨウ化カリウムはヨードチンキの成分であり、それを用いることも可能である(濃度を調べる必要がある)。あくまでも合法的に入手できるもので調合すること。

調合割合と調合法

 Aのミックス22リットル分をポリタンクなどにいれ水道水18リットルを加えて溶かした後(温湯でもよい。ただし60度以下)、1−数時間放置し完全に溶解しまた、液温が室温(40度以下)に下がったのを確認する。次に室温でCを200ml、次にBを100ml加えてよくまぜて溶かし22リットルまで水道水を足す(20リットルポリタンクの口元近くまでで22リットルぐらいとなるのであらかじめ調査しておく)と出来上がり。この海水の中にすぐ魚などや貝やイソギンチャクなどの生物をいれてもそう問題はない。 脱塩素は特に必要ない。 海水のpH は8程度であるが 8.5以上になるとカルシウムやマグネシウム塩が沈殿するので注意が必要である。

人工海水22リットルにおける調合の表

プレミックス 用量
A ミックス22リットル用 1袋
C 2価イオンミックス 200ml
B 主要成分ミックス 100ml  

注意: Aが溶解してからCをいれさらにBを入れるようにする。また、BとCが直接混ざると直ちに激しく沈殿するので注意が必要。

 

長期飼育の場合pHが下がってくることが多いのでpH調整のためさらに人工海水20リットルあたり10−40gの炭酸水素ナトリウムを入れることがある。

筆者の経験ではこの海水でイソギンチャク、ヒトデ、ナマコが5年、アイナメ、メバル等が1年以上、クサふぐが2年以上、キュウセンが2年以上などであった。これらの寿命は海水の問題より給餌の問題のほうが大きいようである。アメフラシについては数ミリの幼体から飼育した場合、海藻の給餌により本来の寿命である1年をまっとうし産卵するまで成長する。

  貝やウニなどもこの海水中で成長させることが可能である。アワビやサザエの稚貝(0.5−1cm)を5cmぐらいにはすることができる。寿命は2−3年であった。

  クサフグは水温変化に強く、本人工海水中で温度コントロールなしの水槽で(冬場 10度、夏30度)5mmほどの稚魚が2年で10cmほどに成長し生きている。

  クロダイの4cmほどの稚魚が1年で17cmのクロダイに成長している。 餌は冷凍生オキアミがよいようだ。 ハオコゼもこれでいける。 

 イソギンチャクとナマコが6年以上の記録を更新中である。

人工海水の交換は2週間−1月であるが、2年以上交換しなくとも大丈夫なこともある。交換を頻繁にしない場合は蒸発による濃縮が無視できないので減った分だけ水道水を補充する。

 

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