教科書 シラバスへもどる ーCopyRight 阿部 俊之助 2001

細胞のつくりと営み(分子細胞生物学) 

 

目次

                               

第1章    細胞とその構造  

細胞とは                  ・・・・・・・・・・・・・・・・1

原核細胞と真核細胞             ・・・・・・・・・・・・・・・・2

細胞小器官(オルガネラ)の名称と機能    ・・・・・・・・・・・・・・・・3

1.膜系細胞小器官

2.非膜系細胞小器官

動物と植物の細胞の構造と特徴        ・・・・・・・・・・・・・・・・8 

細胞周期と細胞分裂             ・・・・・・・・・・・・・・・・9

 

第2章    細胞の分子構造と機能

 

細胞膜                   ・・・・・・・・・・・・・・11

1. リン資質2重膜と流動モザイクモデル

2. 膜輸送と膜興奮

細胞質のネットワーク―細胞骨格系      ・・・・・・・・・・・・・・14

細胞骨格構成しているタンパク質繊維系とその分子構造・・・・・・・・15

1.       マイクロフィラメント

2.       微小菅

3.       中間径フィラメント

4.       その他のフィラメント

細胞運動                  ・・・・・・・・・・・・・・16

1. 原形質流動

2. 筋収縮

 

第3章    遺伝子発現と細胞構造

細胞におけるタンパク質合成とリボソームの役割・・・・・・・・・・・・・・18

1.真核細胞と原核細胞の細胞質リボソーム

2.タンパク質合成のステップ

原核細胞と真核細胞におけるタンパク質合成  ・・・・・・・・・・・・・・19

1.原核細胞

2.真核細胞

3.真核細胞のmRNAの特徴とその周辺の構造 

5. RNA Editing

第4章 シグナルトランスダクション          ・・・・・・・・・・・・・・25

1.表皮細胞増殖因子(EGF)受容とシグナルトランスダクション

2.活性化型RASにより活性化されるシグナル分子のカスケード

3.RAFファミリー遺伝子の系統と起源

4.シグナル伝達分子の多機能性

5.シグナル伝達分子とガン細胞

参考文献および参考図書                ・・・・・・・・・・・・・・30

 

緒言

 

遺伝子が細胞を形作り、生命として活動させることを遺伝子発現と呼び生命に関する根源的なテーマである。このようなテーマを理解するには、遺伝子と細胞構造の両面を十分に理解することが必要である。このような学問体系を分子細胞生物学(Molecular Cell Biology)といい、これまでの分子生物学および生化学と細胞生物学を統合した、フロンティア領域である。分子細胞生物学は生命の成り立ちと営みを細胞レベルにおいて総合的に理解するものであり、細胞は生命の主役である。そして、生命はそれを構成し関与する分子の化学によって深く理解することができる。

 

 

第一章                          細胞とその構造

 

細胞 (Cell)とは

 

生命の単位、すなわち自己複製と自己維持の単位は細胞である。細胞は細胞膜に仕切られた内側に主要な生命活動の場を確保する。 細胞には遺伝子(gene)があり、この遺伝子はDNAである。遺伝子は複数個存在し一つの生命をコードしている。このような、ある生物が持つ自己複製の単位である複数の遺伝子の組み合わせ(例えば配偶子の染色体の組)をゲノム(genome)と呼ぶ.このような遺伝子DNAをゲノムDNA (genomic DNA) という。このゲノムDNAにコードされた遺伝暗号は、RNAに変換(転写:transcription)されたのちにリボソームと呼ばれる細胞内器官によってタンパク質のアミノ酸配列に翻訳され、細胞を活動させる。したがって生命とは細胞に宿るものである。

 

ウイルス(virus)はゲノムを持つが、それ自体では自己複製能を欠く。またウイルスの粒子は代謝活性に乏しく、細胞におけるような自己維持は見られない。タンパク質合成や核酸合成能も欠く。したがって、時間とともにしだいに減耗し活性を失う。 しかし、細胞に侵入し細胞のタンパク質合成や核酸合成能を利用して、ウイルスのゲノムを複製しウイルス粒子をつくり、増殖するという生命活動を営む。ゲノムがRNAであるウイルス、たとえばインフルエンザウイルス、HIV(Human Immune Virus)、タバコモザイク病ウイルスでは、細胞に侵入してからウイルスが持っている逆転写酵素によりウイルスのゲノムDNAとなってから、細胞の代謝合成系を用いて増殖する。ウイロイドと呼ばれる小さな環状1本鎖RNAはRNAのまま細胞内で増殖し、ウイルス粒子はつくらない。ウイロイド(viroid)は植物の病原体として知られている。

 

 

原核細胞と真核細胞

 

原核細胞(Prokaryotic Cell)は細胞壁、細胞膜, 環状のゲノムDNA,メソゾーム、タンパク質合成のためのリボソーム、細胞運動のための鞭毛や繊毛を持つ。細胞の構造は至って簡単である。ラン色細菌などの光合成細菌は光合成のための色素を有する小胞を持つ。 マイコプラズマや細菌類は全て原核細胞を持つ原核生物である。またラン色細菌は藻類や高等植物と同じタイプの光合成を行うことから、かつてはラン藻類と呼ばれていた。すなわち、光のエネルギーを緑色の色素の一つであるクロロフィルで補足しそれによって水から水素をえて二酸化炭素を還元し糖類を合成し,不要な酸素を放出する。しかし、この生物は細胞体制から原核生物であるのは明白なので現在では藻類に含めることは行われない。 

 

真核細胞(Eukaryotic Cell)は複数のゲノムDNAをもち、これらが染色体となり核と呼ばれる細胞小器官に局在している。さらに、原核細胞と比較するときわめて多様な細胞小器官が分化している。複数のゲノムDNAの正確な分配や、きわめて多様な細胞小器官の分配や、増殖など真核細胞は複雑な過程を通って細胞分裂を行う。真核細胞の細胞小器官の中でミトコンドリアや葉緑体などは独自のゲノムDNAとリボソームを持ち自身で分裂して細胞内におけるこれらこれら小器官の数を増やしていく。このようなことから、いくつかの異なったタイプの原核生物が共生して真核細胞が進化したと考えられている。例えば、シアネレと呼ばれる原生動物とラン色細菌の共生体が知られており、この共生したラン色細菌はあたかも植物の原始的な葉緑体であるかのような形態に変化する。

 

すべての動物、植物,および菌類(カビ,キノコ,酵母等)は真核細胞を持つ真核生物である。単細胞あるいはプランクトンと呼ばれる生物にも真核生物は多い。例えばクロレラやケイソウなどの藻類、ゾウリムシやアメーバなどの原生動物などはみな真核生物である。これら真核細胞は細胞小器官を持ち、一部を除いて、これらの真核生物の間で共通の構造と機能を持つ。例えば,ミトコンドリアはすべての真核細胞に存在し酸化的リン酸化により細胞のエネルギーを生み出す。一方,葉緑体はクロレラ等を含む藻類以上の植物に存在し酸素発生型の光合成を行うが動物には存在しない。また、植物においては非光合成器官,例えば根の細胞には見られない。 細胞小器官は,ミトコンドリアや葉緑体のように独自のゲノムとリボソームを持つものであっても、細胞の核にあるゲノムの支配も受けてそれらの機能が制御される。

 

 

細胞小器官(オルガネラ、oruganelle)の名称と機能

 

細胞の中あるいはそのまわりには細胞の形態や機能に直接関わりを持つ種々の器官が存在する。これらのものを広義の細胞小器官と呼び、細胞壁のように細胞膜の外に存在するものもある。しかし、細胞小器官といえば一般的には細胞内(すなわち原形質内)に存在する構造的あるいは機能的に分化した構造体をさす。これらは脂質の膜で形作られている膜系細胞小器官と脂質の膜を持たない非膜系細胞小器官に大まかに分類される。小胞体とリボソームからなる粗面小胞体のように、膜系と非膜系の小器官が結びついて一つの小器官となることもある。 

 

 

なお、細胞小器官の名称はラテン系などの言語に由来するものが多く英語名の品詞による綴り変化が典型的な英語タイプではないものについて、その単数形とともに、複数形(p1.)及び形容詞形(adj.)を示した。日本語でオルガネラというのは、このラテン形(organella)に由来すると思われる。

 

. 膜系細胞小器官 (Membranous organelles)

細胞膜 (plasma membrane)

原形質に接して外界と細胞内部の境界となっている生体膜をいう。細胞壁が丈夫な構造を持ちイオンや低分子の水溶性物質を透過させるのに対し、細胞膜はリン脂質二重膜からなり内側と外側の表面に全体としてマイナスの電荷をもつ薄く軟らかい構造体である。中性分子や高分子、マイナス電荷をもつイオンなどは通しにくい。選択的輸送体が存在するときこれらに対し促進拡散、能動輸送が行われる。また、小胞との融合や食作用による高分子や多量の物質とりこみや放出の機能もある。

 

(nucleus, nuclei(p1.)nuclear(adj.))

細胞は核の分化によって真核細胞と原核細胞に分けることができる。核は染色体を含んでおり、また核膜と呼ばれる二重の袋状膜に包まれた細胞小器官である。この核膜には、RNAはじめリボソーム粒子やタンパク質が通り抜けることのできる核膜孔という穴が多数あいている。核の大きな役割は遺伝物質であるDNAによって遺伝を支配することにある。

 

核小体(nucleolus, nucleoli (p1.)nucleolar (adj.))

真核細胞の核内にある小体でリボソームRNA合成とリボソームの組立を行う。

 

ミトコンドリア(mitochondrion, mitochondria (p1.)mitochondrial (adj.))

ほとんどすべての真核細胞の細胞質中にある細胞小器官で、酸素呼吸(酸化的リン酸化)を行う。形や大きさは様々で、高等植物や動物では球型や円柱型が一般的である。ミトコンドリアは二重膜からなる膜で囲まれており、内側の膜の表面積はクリスタと呼ばれるひだで増加する。クリスタは、ゲル状の基質に突出している。酸化的リン酸化及び電子伝達系の構成要素はクリスタにあり、基本粒子も含まれる。ここにはATPアーゼ酵素からなるこぶし状の小粒があり、これがリン酸化に関与している。ミトコンドリア基質はクレブス回路や脂肪酸酸化の様々な酵素,環状DNA、70Sリボソームなども含んでいる。

 

葉緑体(chloroplastchloroplastic (adj.))

光合成が行われる色素体。葉緑体は光合成細菌とラン藻類以外の、光合成を行う生物の全てに見られる。直径310μmの両凸レンズのような形で、二重の外膜に挟まれている。内側には、ラメラ系とゲル状のストロマ系がある。ラメラは一連の膜から出来ており,チラコイドという、液体の入った袋になっている。ところどころにグラナと呼ばれる円形のチラコイドがあり、インター、ラメラ、グラナでつながっている。ラメラ系は光合成の明反応の場で、その膜はクロロフィルとカロチノイドを含む。葉緑体はラメラに結合したり、あるいは、ストロマに遊離した形で葉緑体独自のリボソームを含む。ストロマには、このほか葉緑体のゲノムDNAの微繊維や脂質の小滴、及び光合成の暗反応の酵素をはじめ、葉緑体の可溶性の成分も含まれている。

 

小胞体(endoplasmic reticulumendoplasmic reticula (p1.))

真核細胞の細胞質内に網目状に広がる膜系で形態は細胞の種類によって多様であり核の外膜との連続が認められる。膜の細胞質側表面に多数のリボソームが付着している粗面小胞体と付着していない滑面小胞体に大別される。 

 

滑面小胞体(smooth endoplasmic reticulum ...reticula (p1.))

この機能は細胞によって異なるが一般には脂質代謝が主要な機能である。同一の細胞内に滑面小胞体と粗面小胞体が共存している場合、これらの膜はたいてい連続しており粗面小胞体にみられる酵素は滑面小胞体にも分布し、また小胞体内腔も連続しているので滑面小胞体内腔は粗面小胞体で合成された分泌タンパク質がゴルジ体分泌顆粒へと輸送される経路であるとも考えられる。

 

粗面小胞体(rough endoplasmic reticulum, ...reticula (pl.))

膜の細胞質側表面に多数のリボソームが付着している小胞体で分泌タンパク質は粗面小胞体の膜結合リボソームで合成される。これはタンパク質を細胞外へ分泌する臓器の細胞等において著しく発達している。そのほか、植物では種子などの貯蔵タンパク質の合成にもかかわる(タンパク質小体参照)。

 

液胞(vacuolevacuolar (adj.))

細胞内で膜に囲まれて存在する透明な水溶液部分で、内部には糖・有機酸・アルカロイド・色素等、その細胞特有の成分を含む。正常動物細胞では認められる例が少なく、植物細胞では老化とともに大型化する。液胞はその吸水力により膨圧を生じて細胞壁の緊張状態を保たせる。これの成因は細胞の老化による老廃物の蓄積にある。高等植物においては貯蔵タンパク質の貯蔵場所としても用いられる(タンパク質小体参照)。

 

ペルオキシソーム(peroxysomeperoxysomal (adj.))

カタラーゼ及び一群の酸化酵素を含む細胞質内の小顆粒で一重の膜に囲まれており内部には細かい粒上の顆粒を含む。高等植物をはじめ原生動物,藻類などにも広く分布する。いずれもカタラーゼを含むが生物,組織の種類によっても異なる。これらの酸化酵素によってアミノ酸、アルコール、フェノール、蟻酸を酸化し生じた過酸化水素をカタラーゼで分解する。動物細胞ではその他に尿酸分解をもち尿酸分解経路に関与する。植物ではグリオキシル酸回路をもち脂質代謝に関与する。

 

白色体(leucoplast)

地下茎,根などの正常な光条件下でも緑化しないような組織の細胞に含まれる。比較的小さく二重の包膜で囲まれているが内部には発達した膜器官はない。多くの白色体はデンプン粒を持っている。

 

ゴルジ小胞(golgi veisicles)

小胞体で合成された分泌タンパク質はゴルジ体に輸送され、糖鎖の付加などの化学的修飾を受けてゴルジ体より分泌される。ゴルジ体から分泌された小胞は細胞膜やリソソームなどに選別輸送される。

 

リソソーム(lysosomelysosomal (adj.))

水解小体ともいう。真核細胞内の膜で包まれた細胞質構造体で、加水分解酵素に富み、細胞消化に機能する。グリコシダーゼ・ヌクレアーゼ・プロテアーゼ・リパーゼ・スルファターゼ・ホスファターゼ等、約60種の酸加水分解酵素を含む。一次リソソームは、消化すべき物質にまだ出会っていない、新しく形成された小器官である。二次リソソームは、一次リソソームと各種の物質との融合を繰り返して、形態的に多様に変化した膜胞である。

 

ディクチオソーム(dictyosomedictyosomal (adj.))

1・植物細胞のゴルジ装置;2・ゴルジ小胞と液胞膜との融合によって形成される液胞;3・ゴルジ積層;4・単鞭毛菌の運動性胞子において鞭毛基部をなす構造。

 

タンパク質小体(protein body)

植物細胞に特徴的にみられるタンパク質の細胞内貯蔵器官。特に大豆の子葉や稲やトウモロコシなどの種子の胚乳に多く見られる。小胞体やゴルジ小胞あるいは液胞などの細胞内膜系に由来する。貯蔵されるタンパク質はゼイン、グリシニン、プロラミン、グルテリン等の貯蔵タンパク質であり、その貯蔵密度は著しく高いのが普通である。

 

デスモソーム(desmosome)

細胞間結合様式の一つで接着斑とも呼ぶ。隣接する真核細胞の細胞膜の肥厚部。細胞接着に機能すると考えられている。

 

細胞間連絡(plasmodesmata)

細胞壁を通りぬけ、一方の細胞から隣接する細胞へ連絡する、高等植物に見られる微細な原形質チャンネル。各チャンネルは細胞膜と連なって、二つの隣り合う細胞に共通し、通常デスモチューブルと呼ばれる微細な管状構造をなす。それは、直径約40nmの管状の原形質で、中央部に電子密度の高い物質を持つ。細胞分裂終期において形成された細胞板の不連続孔由来すると考えられている。

 

2.非膜系細胞小器官(Non-membranous organelles)

細胞骨格(cytoskeleton)

真核細胞の細胞質に縦横に張り巡らされて存在する。チューブリン(tublin)よりなる微小管(MTmicrotuble)、アクチン(actin)よりなるマイクロフィラメント(MFmaicrofilament)、デスミンやビメンチンよりなる中間系フィラメント(IFintermediatefilament)によって構成されている網状,束状あるいは糸まり状の構造の総称である。細胞骨格は細胞の形態を規定する構造であると同時に、その連続的変形によって様々な細胞運動としての主装置としての役割を持つとともに遺伝子発現の空間的制御や分布の役割も持ち、動物細胞などではシグナルペプチドなどによるターゲティングよりも細胞骨格との相互作用が重要である場合が知られている。植物においては細胞膜の外側に形成される細胞壁のセルロース繊維の方向や細胞分裂の方向を決めたり、イネやトウモロコシなどの貯蔵タンパク質の生成とタンパク質小体の形成に関与していることなどが知られている。

また、細胞小器官は細胞質で浮遊しているのではなく、細胞骨格に付着して存在しており両者の相互作用によって細胞小器官の動態が支配されている。構成タンパク質に対する抗体を使った蛍光抗体法や部位特異的蛍光染色法によって細胞骨格を観察できる。細胞を低濃度の非イオン性界面活性剤で処理すると、構成繊維の安定条件を選べば、細胞骨格だけを元の構造のまま残すことができる。

 

中心小体(centriole)

中心体の中心にある小体。動物や下等植物細胞に存在する、紡錘糸形成にかかわる自己複製小器官で、9+2構造の微小管からなる。高等植物細胞の紡錘糸形成荷は不要で高等植物細胞には中心小体は存在しない。

 

リボソーム(ribosomeribosomal (adj.))

ほぼ等量のRNAとタンパク質から成り、細胞におけるタンパク質合成の場をなす。多数の細胞下核タンパク質粒子の一つ。各リボソームはほぼ球形で、約20nmの直径を持ち、二つの大きさの異なるサブユニットからなる。これらは大サブユニット,小サブユニットと呼ばれ、細菌では30s50s、動植物細胞では40s60sである。リボソームは細胞質に遊離の状態で存在するか、あるいは小胞体や細胞骨格に接着している。4つのクラスのリボソームが同定されており(細菌,植物,動物,ミトコンドリア)、それらは、モノマー,サブユニット,リボソームRNAなどの構成単位の大きさが異なる。 細菌、葉緑体、ミトコンドリアでは細菌型(原核型)の70Sモノソームである。 動・植物などの真核生物の細胞質リボソームは原核型よりも大きく80Sである。

 

ポリソーム(polysomepolysomal (adj.))

タンパク質合成が行われている時に,リボソームは通常,ポリソームの形をとり、mRNAと結合している.各リボソームは、mRNAという糸に添ってビーズが並んだように、不定数のリボソームが翻訳の過程にある一本のmRNA分子に結び付く。モノソームを構成している小サブユニットがこのmRNA分子への結合にあずかっている。ポリソームは細胞内に遊離しているか、あるいは小胞体の表面か核の外膜に結合している。細胞骨格に結合するポリソームも存在する。

 

細胞壁(cell wall)

植物や原核細胞の細胞膜の外側を取り囲む被膜。細胞膜外に存在するため細胞内小器官としては扱わない。 しかし、細胞壁と細胞の活動とは不可分である。膨圧の発生や形態維持に役立つのみならず、高等植物細胞では細胞壁形成が行われないと細胞分裂が正常に進行しない。維管束植物の成長中の柔細胞の細胞壁は、セルロース,ヘミセルロース,ペクチン,少量のタンパク質からなる薄い一次構造を持ち、成長の停止した細胞は、一次壁の内側に二次壁の厚い層をを形成する。二次壁は、一次壁成分の他に、リグニン,キチン等を含む。カビなどの糸状菌の細胞壁はキチンを多く含む。

原核細胞の細胞壁は、ペプチドグリカン(ムレイン)からなる。グラム陰性菌では、ペプチドグリカン層の外側に、さらに脂質に富んだ外膜を持ち、また、種によっても細胞壁の主成分は大きく異なる。細胞壁のこれらの化学成分の違いは細菌類の分類の重要な指標となる。

 

 

 

動物と植物の細胞の構造と特徴

 

動物細胞は細胞壁を持たないため、細胞の正あるいは負の膨圧に弱い。また、細胞質中の主要カチオンはカリウムイオン(140mM程度)で、浸透濃度は細胞の種類によってあまり変わらず、約300mOs(ミリオスモル)である。 しかし、細胞の受ける浸透圧ストレスは細胞の置かれた溶質濃度環境によって極めて大きな違いが見られる。淡水産の単細胞動物であるアメーバなどでは細胞内に常に水が浸透してくるため、細胞が果てしなく膨張を続けて破裂してしまう危険にさらされている。そのため、積極的に水をくみ出す機構が発達している。一方,海水中に生息する単細胞動物では塩類、特にナトリウムの排出機構が発達している。多細胞動物では体液系や血液系の発達しているものが多く、体内に存在する主要な細胞群のイオン環境及び浸透圧を一定にし、外界のイオン環境の影響を受けにくくしている。脊椎動物では海産,淡水産,陸産を問わず、体液の塩濃度は0.9NaCl相当であることが多い。したがって、脊椎動物での多くの細胞群は極めて均一な塩濃度環境に生活していることになる。このようなNaCl溶液を生理食塩水と呼ぶ。また、脊椎動物の高いナトリウムの必須性はこのように体内に大量に存在する塩水に由来する。細胞自体は多くのNaClを含まない。

 

植物細胞は単細胞か多細胞かを問わず細胞一つ一つが、丈夫な細胞壁で囲まれている。植物細胞も細胞質自体の浸透濃度は動物と同様に主要イオンはカリウムイオンで約300mOsであるが、大きな中心液胞を持つことが多く、ここにさらに高濃度の塩類や糖類を蓄積するため、外部の環境によっては10気圧以上もの極めて大きな圧力を受けることがある。このような圧力を細胞壁にかけることによって植物細胞はその形を保つ。この結果、樹高100mにも達するような樹木でも陸上で成長できる。もし、植物細胞から細胞壁を取り除いたら、細胞の形を保てなくなり全て球形の細胞となる。このような細胞では,外部の浸透濃度を下げると、膨張してきた中心液胞の圧力に細胞膜が耐えられなくなり破裂してしまう。

 

この浸透圧はPVnRT(P,圧力;V,体積;n,分子数(モル数);R,ガス定数;T,絶対温度)で近似される。これを変形すると次のフォントホッフの式が得られる。

 

P=CRT …(1) ここでC=n/Vであり、溶質のモル濃度である。

 

また、細胞にかかる膨圧、Pは細胞の内部と外部の浸透圧の差であり内部の浸透圧をPi、外部の浸透圧をPoとすると

 

P=PiPo…(2)

よってP=CiRTCoRT=(CiCo)RT…(3)

 

ここでCiは細胞内部の溶質濃度を、Coは細胞外部の溶液の溶質濃度を表す。従って、(3)によって、膨圧は細胞内外の溶質のモル数の差によることがわかる。より厳密にいうと、細胞内外の溶液の化学ポテンシャルの差に基づく。

ただし、ここでのモル数は(1)を見ればわかるように溶液の体積あたりの分子数であるのでNaCl などの電解質は各イオンごとに計算する。従って、NaCl1分子ではなくNaイオンとClイオンを別々にし合計で2分子となる。硫酸ナトリウム、Na2SO4では、Naイオンが2分子、硫酸イオンが1分子で合計3分子と計算する。

 

細胞周期と細胞分裂

原核細胞においては細胞が成長しある段階に達するとゲノムDNAの複製が起こり、ゲノムDNA2本となる。これらはそれぞれ細胞の両端に移動し両方のゲノムの中間点で細胞膜と細胞壁が形成されて、細胞内の内容物も2分され新しい細胞(娘細胞)2個生じる。これらがまた成長し同様な細胞分裂を行い、細胞の数が増えていく。

真核細胞においては、最初に分配されるゲノムDNA分子が数本以上ある上に、ヒストンと結合して染色体となり一つの核の中に納められている。これらの染色体を正確に分配するために紡錘糸という微小管からなる構造を形成してこれによって染色体を正確に娘細胞へと分配する。さらに、娘細胞へと分配すべき細胞の構造物も格段に多い。従って、真核細胞においては、複雑なステップを経て長時間かけて細胞分裂が進行することになる。このような細胞分裂を有糸分裂と呼ぶ。

生殖細胞に見られる有糸分裂の一種であるが、染色体の組が複製せずに分かれ染色体数(2n)が半減、すなわち基本数(n)に減少する分裂を減数分裂と呼ぶ。真核生物にとっては、精子や花粉と卵細胞が生じる重要な分裂様式で有性生殖のときにみられる。下等動物では、卵が減数分裂を完了し成熟するまえに放出されるものも多い。 すなわち、第一や第二極体放出を母親の体内ではなく、卵が体外に放出されてからおこなう。減数分裂さえしておらず受精の刺激で卵核が減数分裂するものも多い。 

体細胞分裂においてはDNAの複製が行われる時期をS期、細胞分裂期をM期という。このS期からM期に移るまでに時間のギャップがあり、G2期という。また、M期が終わってから、次のS期が始まるまでの間にも時間のギャップがあり、これをG1期という。 次のページのこの細胞周期を模式的に示した。

細胞周期の模式図

 
wpe2.jpg (57627 バイト)

第2章   細胞の分子構造と機能

 

細胞膜

 

1.リン脂質二重膜と流動モザイクモデル

 

細胞膜は単位膜という特別な脂質膜構造をとっている。この脂質膜はきわめて柔軟で基本的には水とそれに溶けた酸素など以外は通しにくい性質を持っている。この脂質膜にタンパク質が埋め込まれ細胞膜の種々の機能を付加している。このような細胞膜のモデルのことを流動モザイクモデルという。

 

 

2.膜輸送と膜興奮

 

キョク皮動物の祖先をへて魚類へと進化した脊椎動物においては、その最初の祖先が分化した時代の今から約6億年前の海洋の塩濃度の体液系(血液やリンパ液)を持ったまま、哺乳類まで進化したと考えられている。原始海洋より生命を擁しながらゆっくりとナトリウム濃度を上昇させてきた海洋において、まさにその時代に偶然にも海水の塩濃度と組成が神経細胞や中枢神経系の発達と活動の最適値に到達したらしく(0.9)、以後も海水の塩濃度が上がりつづけたにも関わらず、その時代のままの塩濃度を体内に擁したまま、人類まで進化している。塩を濃縮する機構を発達させながら魚類は淡水へと遡上しそこから両棲類へと進化する一方、また海洋にもどっていった魚類あるいは終始海洋にとどまった魚類は、上がりつづける海水濃度に対抗して塩を排出する機構を発達させていったのである。陸上に上がった者達は、やはりこのマジックナンバーをいかなる環境にいようとも必死で維持してきている。神経細胞の活動は精密なイオンバランスのコントロールが極めて物理化学的に行われることに基づくことから、その進化にある特定のイオン環境が必要であったことは容易に想像できる。この、0.9NaCl濃度は約150mMであり、細胞内のカリウムイオン濃度(140mM)とほぼ同じ値であることは重要である。なぜなら、この状態によって正負両方向に均等に振れる効果的に振れるインパルスを、簡単な原理と少量のエネルギーで発生することができるからである。一方、キョク皮動物は淡水に進入することもなく海洋でのみ生存しつづけ、その後も徐々に海水の濃度が上がるにつれて彼らの体液の塩濃度を上昇させ現在の3%になっている。

 

神経細胞においては、細胞膜が電気信号を発生し、細胞膜に沿って伝播する。これを神経膜興奮と言う。この神経インパルスは細胞内外のナトリウムイオンとカリウムイオンの濃度比で決まる。平常の状態では、細胞膜はカリウムイオンは通すがナトリウムイオンは通さない。このときの膜の内外の電位差は内外のカリウムイオンの濃度比により、物理化学的に決定され、この結果次式のように内側が−50mVぐらいとなる(静止膜電位)。つぎに、神経が刺激を受けると、細胞膜にあるナトリウムイオンチャンネルという構造が活性化され、急にナトリウムイオンを通すようになる。この結果、膜電位は急にナトリウムイオン濃度の比で決定されるようになる。ところが先も述べたように、カリウムイオンと時とは逆に細胞外の方がナトリウムイオンが10倍多いので、膜電位は正負が逆転し+50mVぐらいとなる。このナトリウムイオンに対する膜の透過性は、一過的で数ミリ秒たつとナトリウムイオンに対する透過性は元のように低下し、ふたたび、カリウムイオンの内外の濃度差で膜電位が決まるようになる。この一連の現象の結果、神経細胞は数ミリ秒の幅の狭い電気パルスを発することができる。このような神経細胞の情報伝達・処理機能を安定に維持するためにも6億年前の海水すなわち脊椎動物の体液の塩組成は極めて重要であることが理解できる。

 

このようなイオンの濃度差による膜電位、Emは次式で表され、これをネルンストの式という。

 

     RT    [Ci]              

 

     nF    [Co]

 

ここで、R,ガス定数;T,絶対温度;F,ファラデー定数(1モルの電子が運ぶ電荷);n,イオンの価数;ln,自然対数

 

 

(1)式の自然対数を常用対数に置き換えまた常温(25度C)で常数を計算すると次式がえられる。

 

           [Ci]

          [Co]      

 

さて、式(1)、(2)は一種類のイオンのみが膜電位に関わっているときに成立するが、この章で取り扱う神経膜興奮においてはすでに述べたように、ナトリウムイオンとカリウムイオンの2種類である。この場合は、次のようなゴールドマンの式で表される。

 

           Pna[Cna]i + Pk[Ck]i

          Pna[Cna]o + Pk[Ck]o

 

 

ここで、Pna,Pkはそれぞれナトリウム、及びカリウムイオンに対する膜の通りやすさ(膜透過定数;Permeability Constant)CnaCkはそれぞれナトリウムイオンとカリウムイオンの濃度である。[ iと[ oはそれぞれ細胞内及び細胞外のイオン濃度を示す。神経がインパルスを出していないときはこのPnaPkに比べてはるかに小さく膜電位は細胞内外のカリウムイオン濃度の比で決まる。次に、神経が興奮するとPnaが急に大きくなりナトリウムイオンがカリウムイオンより通りやすくなるため膜電位はナトリウムイオンの内外の濃度で決まるようになる。 次に脊椎動物の神経細胞の細胞膜の内外のイオン環境を例に示した。

 

                             神経細胞膜

            細胞外 [c]o                                 細胞内  [C]i

        Na、150mM

 

           10mM

 

 

 

            Na、10mM

 

             、140mM

 

 

 

 

 

脊椎動物の神経においては、上図のようにナトリウムイオンとカリウムイオンの内外の濃度はほぼちょうどミラーイメージのような逆の関係にあるので、ナトリウムイオンとカリウムイオンの膜透過性が変化すると正負両方向にまたがった神経インパルスを発生する。これを膜電位のオーバーシュートという。また、この興奮電位のことを活動電位と呼ぶ。フグ毒であるテトロドトキシンはこの興奮機構の中のナトリウムの透過性を支配する,ナトリウムチャンネルというタンパク質に結合し、神経膜のナトリウムの透過を阻止することによって神経麻痺を引き起こす。

神経インパルス発生のタイムチャートの模式図

                    活動電位   

 

    100

 

 

 

   50

 

 

 

(mV)  0

 

 

 

    -50

 

   -100

 

 

 

 

          静止電位        時間(ms)           静止電位

                          

 

細胞によって、特に下等動物では活動電位の発生にナトリウムイオンではなくカルシウムイオンなどの他のイオンが役割を果たしている場合がある。これは、フグ毒が下等動物に対しては毒性がない一つの理由である。車軸藻などの植物細胞では、カリウムイオン、カルシウムイオン、並びに塩素イオンなどが活動電位の発生に寄与している。

 

 

 

細胞質ネットワークとその分子構成 ――細胞骨格系

 

細胞骨格とは、細菌類を除く全ての生物の細胞質の基本構造で、ちょうど通信設備や内外の環境のセンサーや報知器、エレベーターなどの運搬装置などを持った、しかも変形できるゴム製の建物のようなもので細胞の基本的な働きの立体的な有機的な活動を可能にする。オルガネラはこの建物の中にはまり込むことになる。遺伝子(DNA)はちょうどこの建物の中のという名前の図書館にある、生命の設計図と対処すべき問題の答を記した文献にたとえられます。ここで遺伝子が生命の根源を塩基配列という文字でコードするとすれば、細胞骨格は―――図書館で読んできた文献の内容―――すなわち遺伝子の暗号を実在の生命の形に変換し活動させるものである。ゆえに、細胞骨格のことを3次元の遺伝子と呼ぶこともある。また、このように遺伝子(DNA)が生命を形作り、活動させることを遺伝子発現と呼び生命研究の永遠のテーマである。

 

植物細胞の細胞骨格と呼ばれる細胞内ネットワークの一つであるF−アクチンを蛍光色素(ローダミンファロイジン)で染め緑色光(517nm)で照射し発生したローダミンのオレンジ色(580nm)の蛍光を観察したものを次に写真に示す。このオレンジ色の蛍光にそって細胞骨格を作っているF−アクチンというタンパク質繊維がある。

 


エンドウ上胚軸細胞のF?アクチン細胞骨格のレーザー顕微鏡写真

ローダミンファロイジンによる標識蛍光像

 

 

 

1.細胞骨格を形成しているタンパク質繊維系とその分子構造

 

(1) マイクロフィラメント(MF;Microfilament)

直径69nmの繊維状アクチンという分子量4万2千のタンパク質がATPとCaMgと結合してG−アクチンという基本単位をつくる。このG−アクチンが幾つも連なって繊維状のF−アクチンをつくる。これがマイクロフィラメントである。このアクチン分子は系統的に離れた真核生物間、例えば脊椎動物と被子植物との間でも極めて保存性が高い。

 

 

(2) 微小管(MT;Microtubule)

直径25nmの中が中空繊維である。α−チューブリンとβ−チューブリンという分子量5万のサブユニットが会合して分子量10万のチューブリンというタンパク質となり、これが重合して長い中空繊維をつくる。このチューブリン1分子にはGTP(グアニン3リン酸)2分子結合している。

チューブリンは生物種間でアクチンほど保存性は高くなく、特にα−チューブリンの保存性は低い。少なくとも植物と動物で分子量や抗原性が異なる。

 

 

(3) 中間径フィラメント(IF;Intermediate Filament)

直径11nm程度の繊維系であり構成するタンパク質の種類は多い。たとえばデスミン、ビメンチン、ニューロフィラメントタンパク、ケラチンなどである。MFMTにくらべると安定である。動物細胞では普遍的にどれかのタイプの中間径フィラメントが見られるが、植物細胞では中間径フィラメントの存在は確定していない。

 

 

(4) その他のフィラメント系

ミオシンフィラメントや4―5nmフィラメントが知られているが、ミオシンフィラメントを除けば、その実体と機能、役割、分子構成などは分かっていないものがほとんどである。それらのうちで、ある種の4nmフィラメントが植物の細胞質では多く存在し、またリボソームと結合してタンパク質合成に何らかの役割を果たしていることが、ごく最近筆者の研究で明らかにされている。クレスリンバスケットワーク(Clethrin basket work)という球状の網かごのようなフィラメント系も存在する。この構成タンパク質はクレスリン (clethrin)である。

 

 

細胞運動

1.原形質流動

動植物を問わず真核細胞では原形質が細胞骨格に沿って流動する。これは光学顕微鏡でしばしば容易に観察され、細胞質で合成・代謝された物質の輸送やオルガネラの移動などに役割を果たしていると考えられている。このメカニズムとしてはF−アクチンの繊維状をミオシンというタンパク質がATPを分解しながら滑っていき、相対的に原形質が流れると考えられている。特に車軸藻などの大きな液胞を持つ大型の植物細胞(長さが数十cm、直径が1mm前後)においては原形質流動は活発であり100ミクロン/秒にも達することがあり、この早さは骨格筋の収縮速度にも匹敵する。

 

2.筋収縮

動物の運動器官を構成する筋肉細胞の収縮は、細胞骨格の高度に分化した機能の一つである。特に、骨格筋である横紋筋においては神経インパルスと共役したきわめて整然としたメカニズムが発達している。この主役は収縮機構の本体でアクトミオシンと呼ばれるF−アクチンとミオシンの複合体であり、これに興奮性膜とカルシウムイオンの放出機構が加わる。このアクトミオシンは筋肉タンパク質の約90%を占める。このアクトミオシンは神経インパルスの刺激を受けて放出されたカルシウムイオンの制御により、ATPを分解しながら急激に分子収縮を行う。

 

筋肉細胞には解糖系酵素と多くのミトコンドリアがあり多量のATPを産生するとともに、多量のエネルギー需要に答えるために鉄を含むミオグロビンと呼ばれる酸素蓄積タンパク質やグルコースの重合体であるグリコーゲンを多量に蓄積している。肉や貝柱に甘味があるのはこのグリコーゲンの蓄積による。また、筋肉細胞には多数のリボソームがあり、アクトミオシンなどの合成を活発に行う。

 

 


 

第3章    遺伝子発現と細胞構造

 

細胞におけるタンパク質合成とリボソームの役割

 

生物の細胞は動植物を問わず、生物の生存温度において通常の化学反応では達成できないような速い速度でしかも極めて効率的にタンパク質を始め多くの物質を作り出している。特に、タンパク質合成においては何十段階もの多くの反応ステップを速やかにかつ正確に行っている。大きさが0.025ミクロンほどのリボソームと呼ばれる粒子がこの中心的な働きを担っており、細胞内の化学環境で常温において350個程のアミノ酸を約30秒間で99%以上の正確さで遺伝子コードにもとづいてペプチド結合させる能力を持つ。しかも、1000個以上ものアミノ酸を同様につなげることもできる。ところが、この反応を試験管中に取り出したリボソームを含む細胞成分を用いて行うと数分以上かかる。さらに人間が製作したペプチド合成機で行うと何時間もかかるうえに数十個のアミノ酸をつなげるのが限界である。この生物の細胞が持つ効率の高さは、タンパク質合成にかかわる種々のステップに必要な因子が溶液中にバラバラに存在するのではなく、あるまとまりや連携を持って細胞質空間に有機的に立体配置されているためと考えられる。この立体配置を司るのが、細胞骨格などの細胞内ネットワークである。

 

 

1.原核細胞と真核細胞の細胞質リボソーム

リボソームはその基本粒子がモノソームと呼ばれる。このモノソームは大サブユニットと小サブユニット1個ずつが会合してできている。このサブユニットは原核細胞と真核細胞とでは大きさが異なり、従って、モノソームの大きさも異なる。これらのリボソームの大きさを表すのが重力による粒子の沈降速度の定数で、沈降という意味の英語(sedimentation)の頭文字を取ってと呼ばれる単位である。

 

表  リボソームおよびサブユニットの大きさ

 

モノソーム

小サブユニット

大サブユニット

原核細胞

70

2,500,000

30

900,000

50

1,600,000

真核細胞

80

4,200,000

40

1,400,000

60

2,800,000

 

S値の下に示した数字は各粒子のおおよその分子量である。

真核細胞のミトコンドリアや葉緑体は独自のタンパク質合成系を持ちこれらのリボソームのタイプと大きさは原核細胞のものとほぼ同じである。

 

 

 

2.タンパク質合成のステップ

 

タンパク質の合成にはいくつかの主要なステップがある。

(1)  転写(Transcription)― 遺伝子DNAを鋳型としてmRNAを合成する。mRNA上のタンパク質のアミノ酸配列をコードする領域を読み枠(コード領域またはオープンリーディングフレーム;ORF)と呼ぶ。

 

(2)翻訳(Translation)― mRNAに写し取られた遺伝暗号に従ってリボソーム上で、tRNAにより運ばれたアミノ酸をペプチド結合させてタンパク質を合成する。リボソームはrRNA(ribosomal RNA)とリボソームタンパク質よりなる、このときかならずmRNAのコドンの5´側よりよみとる。アミノ酸配列でいうとペプチドのN末端から合成を始めC末端で終わる。

 

真核細胞と原核細胞とではリボソームの大きさおよびmRNAの構造に大きな違いがみられるが遺伝暗号や基本的なタンパク質合成の流れは同一である。 リボソームの大サブユニットには合成途中のペプチドを保持するP部位(Peptidyl site)とコドンに対応してt−RNAによって運ばれてくる最新のアミノ酸と結合するA部位(Aminoacyl t‐RNA site)がある。開始コドン、AUGに対応する最初のN末端のアミノ酸、メチオニンと結合したt−RNAだけは初めにP部位に結合する。2番目以降のアミノ酸は、まずA部位に運ばれリボソームのmRNA上の3´端への移動に伴いP部位に移される。ここでその新しいアミノ酸のアミノ基に前番のアミノ酸のカルボキシル基がペプチド結合を形成し、新しいアミノ酸がリボソーム上で挿入される。従って、合成途中のペプチド鎖はP部位においてそのカルボキシル末端を固定されながら伸長を続ける。t−RNAは20種のアミノ酸毎に決まったものがあり、このt−RNAの厳密なアミノ酸選択性とコドンの認識によりm−RNAにコードされたアミノ酸が正確にリボソーム上にもたらされる。

 

 

原核細胞と真核細胞におけるタンパク質合成

 

タンパク質合成のメカニズムは原核細胞と真核細胞とでは基本的には同一であるが、前出のようなリボソームとそれらのサブユニットの大きさの違いのほか、mRNAの生成や構造、などにいくつかの特徴的違いがみられる。

 

1.原核細胞

(1)mRNAは複数の遺伝子を転写しているポリシストロニック

(2)リボソーム結合開始部位が各フレームごと(ORFごと)にある。

(3)開始コドンは10塩基ほど上流(5’側)にSD配列をともなったAUGである。

(3)リボソームは70  

 

2.真核細胞

(1)mRNAはただ一つの遺伝子を転写しているモノシストロニック

(2)mRNAの5´端に5´キャップという特殊な構造が付加されている。

(3)3´端においてはポリアデニレートされたポリAテールが付加されている。

(4)ゲノムDNAにはイントロンがあるので、mRNAはこのイントロンを削除するように加工される。

(5)リボソームはmRNAの最上流(5´端)に結合した後、3´方向へ移動を続け最初に現れる開始コドン(AUG)を認識しそこからストップコドンに遭遇するまでmRNAの3´端に向かって翻訳を続ける。

(6)開始コドンには特有のモチーフを有するAUGである(Kozakの開始コドン)。

(6)リボソームは80

 

  以上の原則には若干の例外が知られている: 複数の遺伝子が転写され結合し複数の読み枠をもつポリシストロニックmRNA, ポリAテールのないmRNA、イントロンのない遺伝子などである。 また、転写後、RNAレベルで塩基変換がおこりゲノムコードとことなる塩基やアミノ酸のコード変化を生じるRNA Editingや最初のAUGをスキップしてその次のAUGを開始コドンとするLeaky Scanningなども知られている。

 

 

 

3.真核細胞のmRNAの開始コドンとその周辺の配列

 

(1)Kozakの開始コドン

’capUAA−−−ANNAUGG---- 3’  N A,U,C,Gのいずれかをあらわす。 UAAは開始コドンの始まる前(読み枠の始まる前)にあるストップコドンの一例で、他にUAGUGAがある。 このAUGで最初のメチオニンすなわち開始コドンがコードされる典型的な開始コドンのモチーフである。 このKozakの開始コドンと5Capとの間の非翻訳領域には、このように多くの場合同じ読み枠を5のほうにたどっていくとストップコドンがある(開始コドンより下流の3側にある読み枠の終了(ペプチドの終了)を示すストップコドンとは別であることに注意)。たとえばACCAUGGなどとなるーここで枠に囲ったAUGが開始コドンのメチオニンである。 最初のAUGの周辺の配列がこのモチーフから外れる場合、開始コドンとならないことがある(下段(3)参照)。

 

(2)   真核細胞のポリシストロニックmRNA

 

真核細胞の細胞質mRNAすなわち、細胞核のゲノムから転写されたmRNAは一般的には1本のmRNA当たりひとつの読み枠、すなわち一つの遺伝子しか転写していないのが普通である(モノシストロニック)。 しかしなかには1本のmRNAが複数の遺伝子を転写していたり、複数の読み枠によって以下のように複数のペプチドをコードすることがある。 

 

’cap−−(UAA)−−ANNAUGG-------UAG−−−−−ANNAUGG----UAG---------- 

 

ここで UAA,UAGはストップコドンである。他にUGAがある。 

 

 

(3)   Leaky Scanning

 

 

 cap−−−−−YNNAUGY-----ーーーANNAUGG---    Y: G,A

 

  ここで最初のAUGはスキップされ、次のKozakの開始コドン(ANNAUGG)で翻訳が開始される場合があり、これをLeaky Scanningという。 すなわち、最初のAUGの開始コドンとしての機能が弱まるということである。 一方、この一番最初のAUGがこれらいずれかのモチーフを持たない場合は読まれずにとばされる。 このことは、また、mRNA5’側に位置する最初のAUGが常に開始コドンであるとは限らないことを意味する。

 

 

 

4. RNA Editing

 

遺伝子の塩基配列をRNAに忠実に転写したのち、このRNAの塩基の一部を変更し遺伝子にコードされていない配列を作り出す仕組みのひとつである。 一般的には転写後におけるRNAの構成塩基のうち同じピリミジン間、すなわちU(ウラシル)からC(シトシン)へあるいはCからUへという変換、または同じプリン同士でA(アデニン)からG(グアニン)あるいはGからAという変換である。 これらの変換は脱アミノ基あるいはアミノ化により塩基のヘテロ骨格を変えない反応により生じる。ミトコンドリアの遺伝子の発現で最初にみつかったが、のちに核ゲノムコードのmRNAにおいても見つかっている。 このようなアミノ酸コードの変異は遺伝子にコードされていないアミノ酸配列をもつペプチドの生成を意味している。

 

 

RNA Editing における典型的な塩基変換

 

A ビリミジン塩基間の変換

 

B プリン塩基間の変換

 

4章  シグナルトランスダクション

 

 多細胞の真核生物の細胞においては、数多くのホルモンや細胞間信号伝達物質を利用して組織や器官の役割分担ならびにそれらの統合的活動を行っている。これらの細胞外信号は、エンドサイト−シスや輸送体によって細胞内に取り込まれるか、細胞表層にある受容体(Receptor)を介して細胞内に信号を伝える。これは、シグナルトランスダクションと呼ばれ、細胞の時間的かつ空間的な遺伝子発現や機能発現に重要な役割を果たしており、分子細胞生物学における中心的課題であり、ガンをはじめ、種々の病気の原因やメカニズムの理解に不可欠である。

1.上皮細胞増殖因子(EGF)の受容とシグナルトランスダクション

シグナルトランスダクションを開始するに当たって一番最初に刺激を受容する受容体の典型的なものは、外表面に突き出した構造によりホルモンなどのシグナル分子を捕らえ、その受容体の構造変化が細胞内に張り出した構造を変化させる。この変化した構造が別の信号伝達因子に信号を伝え、さらに、リン酸化などを行ういくつもの分子からなるシグナルトランスダクションカスケードを通じて、たとえば、最終的にシグナルを核内に送り込み遺伝子を活性化する。このようなシグナルトランスダクションカスケードの代表的なものは、上皮細胞増殖因子であるEGFの受容により、細胞分裂を活性化するRASシグナルトランスダクションである。このEGFは唾液に含まれる細胞増殖因子として最初に同定されたペプチドホルモンであり、口腔にできた傷が速やかに治癒する原動力になっている。図4-1に示したように、このシグナルトランスダクションは、EGFからRASにいたる細胞膜表面の経路の活性化で始まる。RASは細胞質側へシグナルを中継する拠点として細胞膜内側に局在するタンパク質である。まず、細胞膜の外表面に張り出した不活性な2分子のEGFレセプター(RTK、図4-1-1)が2分子のEGFと結合して2量体を形成するとともに、細胞質内に突き出たRTKの部分にリン酸が結合する(リン酸化)(図412)。このリン酸化された分子にGRB2Sosというタンパク質分子が近寄ってくる(図4--)。そして、GRB2Sosが結合しRASというタンパク質分子との間をブリッジする(図4−1−3)。この結果、RASにはまり込んでいたGDPが放出され、代わりにGTPが入り込むことによってRASは構造変化を起こして活性RASとなり、Sos分子から遊離し細胞質のセカンドメッセンジャーにシグナリングを始める準備が完了する(図4-1-4

 

 

2.活性RASにより活性化されるシグナル分子のカスケード

 

活性RASが受け取ったシグナルは、RASに会合し細胞質内部へとシグナルを伝える最初の反応を行うRAFに伝えられ、最終受容体までの細胞内経路を形成する。転写まで届く場合は、細胞質内経路と核内経路にさらに分けることができる。

RAFの構造は、図4−2に示したように、シグナル伝達をする分子の典型的な構造をもつ。すなわち、シグナル伝達経路の上流のシグナル分子と結合する部位と、それによって活性化される部位、および補助的因子の結合部位である。このRAFの上流のシグナル分子、すなわちRASと結合するRBDRAS Binding Domain)、補助因子結合部位(C1)、および下流のシグナル分子の活性化部位としてタンパク質中のセリンまたはトレオニン残基をリン酸化するプロテインキナーゼと呼ばれる酵素活性ドメイン(ST_K)を持つ。この一連の活性化や構造形成において、タンパク質にリン酸が結合するリン酸化が重要な役割を果たす。

テキスト ボックス: 図4−2 RAFタンパク質のドメイン構造




RBD: RASに結合する部位; C1補助因子結合部位;S_TKc、セリン/トレオニンタンパク質リン酸化酵素活性部位

 

 

 

図4-1の4で活性化されたRASは、14-3-3というタンパク質が結合した細胞質にあるRAFというタンパク質分子(RAS Associated Factor)と結合する。このRAFは、図5−3に示したように、リン酸化の後に、14-3-3という名前の細胞質タンパク質の2量体と結合する。この不活性RAF複合体は図5−1の反応で活性化された構造に変化したRASに(4‐3‐1)、RAFのRBD(図4-2)を通して結合する(4‐3‐2)。すると、リン酸化と脱リン酸化が起こり、RAFは活性化されて14-3-3とRASから離れる。この活性化したRAFは、そのC末端にあるセリン/トレオニンプロテインキナーゼ活性によってMEKと呼ばれるある種のキナーゼ(リン酸化酵素)をリン酸化し活性化する。この活性化されたMEKは、さらにMAPKとよばれるキナーゼ(Mitogen Activated Protein Kinase)をリン酸化して活性化する。このキナーゼは細胞分裂因子であり、2量体を形成して、p90RSKというキナーゼを細胞質で活性化するとともに核内に入り、TCFという転写因子を活性化する。一方、MAPKにより活性化されたp90RSKも核内に入り、SRFという転写因子をリン酸化し活性化する。これらの活性化された転写因子、TCF1分子とSRF2分子が会合し遺伝子の転写を促進するプロモーターのひとつであるSREをもつ遺伝子のSRE部位に結合し、その遺伝子の転写を活性化し、mRNAが生じて核外にでて、リボソームにより翻訳されて細胞分裂などを誘導することテキスト ボックス: 図4−3 活性化RASによる細胞内シグナルトランスダクションの起動になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3.RAFファミリー遺伝子の系統と起源

 

RAFは、真核生物に普遍的に存在すると考えられ、ショウジョウバエを初め、魚類や哺乳類などの脊椎動物に存在するほか、類似の分子は植物にも存在してシグナルトランスダクションを担っている。

 ヒトにおいては、RAFは3つのパラログをもつファミリー遺伝子で、X染色体にARAF(Xp11)、7番染色体にBRAF(7q34),および3番染色体にRAF1(3p25)がある。これらのうち、RAF1BRAFは必須の遺伝子で、それらを破壊すると致死的となる。このRAFにコードされるアミノ酸配列の相同性を基にして、図4−4のような分子進化の系統樹を作製してみると、無脊椎動物から脊椎動物へと進化する過程でRAFが3つのグループに分かれることがわかる。しかも、コードされるタンパク質の相同性と系統性のみならず、ゲノム上の構造、すなわちエキソンとイントロンの数と境界が、脊椎動物間のみならず、3つのRAFパラログ同士でも極めて似通っており、これらは起源が同一であると考えざるをえない。このように、最下等の脊椎動物である魚類においても、RAFは哺乳類と極めて類似した3つのパラログとして存在するが、無脊椎動物には一つ存在する。このことは、約5億年前に無脊椎動物から脊椎動物である魚類が進化する際に起きた2回にわたるゲノムの重複の結果(すなわち8倍体化)、生じた4個のコピーのうち3つが進化してそれぞれ異なる役割を担うようになり、これらが3つのパラログとして確立して生き残る一方、新たな役割をもてなかったコピーは、冗長なため進化の過程で早かに消滅したと考えられる。これらRAFのパラログのうち、BRAFがもっとも古く、最も新しいものがARAFである。ARAFは魚類の進化の際にRAF1と分かれて生じたもので、哺乳類の進化に伴い哺乳類の性染色体であるX染色体に移行したと思われる(阿部ら、2003年)。ARAFはもっとも変化したRAFであり、哺乳類においてはX染色体に関係する新しい機能を担っている可能性もある。しかしながら、ARAFは他のRAFとは異なり、生存には必須ではない。また、魚類には独立したX染色体はないため、脊椎動物ゲノム上のARAFの位置の進化は、X染色体の進化を考える上で極めて興味深い。

http://molcellbiology.jp/evolution/SYN-RAF01.htm

植物においては、CTRと呼ばれるRAFに類似の遺伝子がエチレンの受容経路に存在し、RTK/RASにあたる上流のERSあるいはETRというエチレンレセプターから信号を受け取り下流のシグナル分子を不活化するのが特徴である。この経路から核内に到達した2次シグナルにより転写の抑制が解除・調節され、果実のとう熟や落花、離層の形成あるいはその他のエチレンで誘導される応答に関与している(黒田ら、2003年)。

 

4.シグナル伝達分子の多機能性

異なるシグナルに対し、同じ経路が部分的に使われたり、受容体が異なるだけで、経路は同じであったり、と同じ分子が複数のシグナルトランスダクションに関わっている場合も珍しくはない。例えば、RASシグナルトランスダクションにおいて、RASから信号を受け取るRAFの分子構造を補助する14-3-3というタンパク質因子は、EPS15という別のEGF受容経路にあるRAFに似た因子(SH3タンパク質)を同様に補助するが、この経路は細胞増殖とは全く逆のアポトーシスあるいは増殖抑制に関わっていると考えられている。また、RAFは、やはり細胞表面にある特定のアセチルコリン受容神経レセプター(alpha7 nicotinic acetylcholine receptor (alpha7 nAChR)と会合して別のシグナルトランスダクション経路を構成して細胞増殖に関わる。このRAFの経路は、この受容体が喫煙により生じる特有の発ガン性ニトロソアミン:nitrosamine 4-(methylnitrosamino)-1-(3-pyridyl)-1-butanone (NNK)と結合することによって、常態的に活性化され、肺がん細胞を増殖させる(Jullら、2001)。

5.シグナル伝達分子とガン細胞 

 RAFは、ガンを引き起こす遺伝子として、トリのウイルスにコードされているのが見つかったのが最初であり、原ガン遺伝子(proto-oncogene)とも呼ばれ、長い研究の歴史がある。しかしながら、ヒトのガンにおける関与が明確になってきたのは、最近である。ヒトのBRAFの599番目のアミノ酸、バリンをコードするコドン”GTG”の2番目の塩基である”T"が”A"に変化する一塩基変異により”GAG"となり、グルタミン酸に変化する。このV599Eと呼ばれる変異はBRAFの常態的活性化を引き起こす。 紫外線による皮膚ガンや胃ガン、あるいは乳ガンなどの原因となることが知られている。特に皮膚ガンにおいては60%以上がこの変異であるという。BRAFにはほかにも類似の活性化を引き起こす変異が存在する。一方、ガン細胞が抗ガン剤に対する耐性を示すときに、RAF1の発現が高まる場合があることが知られている。

参考文献

Shunnosuke Abe, Shigeki Chiba, Neena Mishra, Yasutaka Minamino, Hiroko Nakasuji Masanori Doi and Todd A. Gray..  Origin and evolution of the genomic region encoding RAF1, MKRN2, PPARG, and SYN2 in human chromosome 3p25  Marine Biotechnology Volume 6, Supplement 1, 2004.  S404-S412.

Satoshi Kuroda, Yukio Hirose, Masaya Shiraishi, Eric Davies, Shunnosuke Abe.. Co-expression of an ethylene receptor gene, ERS1, and ethylene signaling regulator gene, CTR1, in Delphinium during abscission of florets   Plant Physiology and Biochemistry 42:745-751 2004..

Jull BA, Plummer HK 3rd, Schuller HM. Nicotinic receptor-mediated activation by the tobacco-specific nitrosamine NNK of a Raf-1/MAP kinase pathway, resulting in phosphorylation of c-myc in human small cell lung carcinoma cells and pulmonary neuroendocrine cells.  Anat  Rec A Discov Mol Cell Evol Biol. 2003 Jan;270(1):51-8.

参考図書

Methods for isolation and analysis of polyribosomes (Chapter 15). Davies E, Abe S、”Methods in Plant Cell Biology, Part B in Methods in Cell Biology, vol 50”、David Berl-Hahn ed, pp. 209-222, Academic press Inc, USA (1995)、 ISBN 0-120-273872-1.

Methods for isolation and analysis of the cytoskeleton (Chapter 16)、Abe S and Davies E,” Methods in Plant Cell Biology, Part B in Methods in Cell Biology, vol 50”、(David Berl-Hahn ed, pp. 223-236, Academic press Inc, USA (1995), ISBN 0-120-273872-1 (1995).

The plant cytoskeleton、Davies E, Fillingham BD, Abe S、”The Cytoskeleton vol 3: Cytoskeleton in specialized tissues and pathological states”、J.E. Hesketh and L.F. Pryme eds、pp.405-449 JAI press (1996) Inc. (1996) USA, ISBN:1-55938-689-4.

植物における遺伝子発現並びにシグナルトランスダクションにおける細胞骨格の役割、阿部俊之助、”遺伝子の構造と機能 第4章4節”、駒野 徹編、pp265-278、学会出版センター分子細胞生物学の基礎  鈴木範男、 三共出版

分子細胞生物学(第4版 上・下)  ダーネル・ロディッシュ・ボルティモア、東京化学同人

Molecular Cell Biology (fifth edition)  Lodish, Berk, DarnellFREEMAN Press

分子細胞生物学  カープ、:東京化学同人 

細胞生物学その分子的アプローチ   プレスコット、東京化学同人 

基礎細胞分子生物学  Weston, Sampson, Leach、宝酒造

基礎の化学  伊藤・今井・金井・滝山・水野、培風館 

生命科学への招待  太田・柳川、三共出版

 

シラバスに戻る