以下の論文の最後の論述は傑作である。 まず、それまでの論述で花粉(すなわちBT剤と同じ)の飛散距離と毒素含有量(BT剤よりはるかに低い)から生じる致死作用が最大でも3mと彼らは結論したうえで、かれらは、GMではなく普通の有機農法などで使われるBT農薬(殺虫剤)の広範囲な散布が蝶などへ重大な影響を与えると、今度はBT剤の散布自体を批判し、その上でBTトウモロコシの花粉がある特定の時期にそれに匹敵すると結論している。 すなわち、この論文はBT剤の広範囲な散布が生物農薬といえども非標的生物に重大な影響を与えると彼らの実験結果の意義を問い直しているわけだ。 したがってこの論旨と彼らの実験結果から逆に広範囲なBT剤(やその他の農薬)の広範囲散布をするよりも組換え植物の方が影響ははるかに少ないと結論することも可能である。 また、駆除対象の害虫があまり出ないところで高価なBTトウモロコシを農家が栽培することは考えにくいし(Monsantoが栽培するのではない)ヨーロッパアワメイガを特に対象した散布は2.2%と表現することは、予防的農薬使用の実態を覆い隠す意図(中国の例参照)が感じられ、実態とは程遠い論述である。ー国際研究プロジェクトの専門家によるこの問題ならびにその他のコメントや評価も掲載してあります

BT形質転換花粉の野外蓄積とオオカバマダラ蝶への致命的影響 

By 佐羽尾 友里

 

要約
 トウモロコシ畑内に生育するトウワタ(Asclepias syriaca)の上に自然に堆積する遺伝子組み替えBtコーンの花粉が、Danaus plexippus L.(Lepidoptera:Danaidae:オオカバマダラ)の幼虫の死亡率を著しく高めるということを我々はここで初めて実証する。Btコーンの花粉が自然に堆積したトウワタ(A.syriaca)を48時間食べた幼虫は、花粉が付着していない葉、及び非Bt花粉(0%)が堆積した葉を食べた幼虫に比べて死亡率が著しく高くなることが認められた。48時間の間、花粉数135個/cm2の濃度で遺伝子組み替えの花粉に曝露したオオカバマダラ(D.plexippus)の幼虫は、その120時間後の死亡率は37%〜70%であった。オオカバマダラ(D.plexippus)の幼虫を3つの濃度で48時間 Bt花粉に曝露した後、生存した個体を育てて成虫とした、その個体に対する致死的な影響は見られなかった。我々が算出した風によって畑の外へ拡散する花粉の量からみると、オオカバマダラ(D.plexippus)に対する遺伝子組み替えの花粉の影響は、少なくとも遺伝子組み替え実験フィールドの境界から10mの地点にまでおよぶだろうと予測する。ただし、幼虫の最高死亡率はトウモロコシ畑内あるいは遺伝子組み替えコーン畑の境界から3m以内のトウワタ(A.syriaca)で記録されるとみられる。我々は、殺虫作用をもつ遺伝子組み替え作物が大規模に植え付けられる前に、その生態学的影響についてもっと十分に科学評価が行われる必要があると結論する。

キーワード:オオカバマダラ(Danaus plexippus)――Bacillus thringiensis-Btコーン(Bt corn)――トランスジェニック花粉(Transgenic pollen)―― Risk assessment



 殺虫作用のある毒性をもつ遺伝子組み替え作物は、米国で1990年代後半以降、広範囲にわたって植え付けが行われてきた(Gould,1998)。European Corn Borer, ヨーロッパアワノメイガ(Ostrinia nubilalis H?ner) (Lepidoptera : Cambidae)を抑制するために開発された土壌菌(Bacillus thuringiensis;Bt)トウモロコシの圃場実験は1992年に実施され、環境保護局(EPA)での商業販売の登録は1995年までになされている(Carozzi及び Koziel, 1997)。1998年における米国でのBtコーンの作付け面積はおよそ360万haであったが、2003年までには1,200万ha(米国の全トウモロコシ作付面積の1/3)になるだろうと予測されている(Federici, 1998)。

 植物にBt遺伝子の組み込んだ時に毒性の発現を高めるため、活性Bt CryIAb毒性タンパク質のコードを持つ遺伝子のみの導入を行った(Perlak,他、1991)。CryIAbはパーティクルガン法で初めてトウモロコシに導入し、その発現はエノールピルビン酸二リン酸塩カルボキシラーゼ遺伝子と花粉に特異的に発現するプロモーターを用いることによってコントロールした。この遺伝子転移はevent176と呼ばれる(Koziel、他、1993)。花粉で高いCryIAbの発現が得られると、ズイ虫の防除効果が高まる。なぜなら、その害虫は第二世代の第一齢幼虫の初期ではしばしばトウモロコシの葉の葉腋に蓄積された花粉を食べる(Carozzi 及びKouzei,1997)。第2の形質転換に使われるカリフラワーモザイクウイルスの35Sプロモーターが、トウモロコシの全組織でのCryIAbの安定な発現を高めた(Armstrong他、1995)。event176の花粉よりeventBt11の方が毒性の発現が少ない。Mon810はeventBt11と非常に類似したeventであり、イベント176の7.1?gBt毒/g新鮮な花粉の重さと比較して0.9マイクロgBt毒/g新鮮な花粉の重さ、の発現であった(EPA 1999b)。

 遺伝子組み替え作物の作付があまりにも速く拡大したため、環境に対する遺伝子組み替え植物の危険性評価と管理について議論されるようになった(Paoletti 及びPimentel 1996:Miller 1998:Mraight他, 2000)。遺伝子組み替えの殺虫性作物が持つ非標的生態への影響は、以前行った実験では、作物に基礎をおく食物網を構成している種、例えば天敵、食性種、植物の病原菌に焦点をあてたものであった(Johnson and Gould 1992; Pilcher et al.1997a, 1997b; Bilbeck et al.1998; Munkvold et al.1999)。遺伝子組み替えの花粉が拡散することから生じる、遺伝子組み替え作物とその近縁野生種間での遺伝子の流れの研究も広く行われてきた(Snow 及びPalma,1997; Lavigne 他 1998)。しかし、圃場外におよぶ種への予期せぬ影響については今のところまだ十分に扱われていない。殺虫性毒物は花粉が風で拡散するのに伴って運ばれるため、その遺伝子組み替え殺虫性花粉は圃場の外に生息する作物以外の植物に付着する。その花粉を摂取してしまうことは環境危険性の一つとして考えられる(Koziel 他 1993; Fearing 他 1997)。

 今回この研究で非標的種として扱ったのはオオカバマダラ(Monarch butterfly:Denaus plexippus L.(Lepidoptera:Danaidae))という広く北米に分布する蝶である。実験室内においてBtコーンの花粉を高濃度でAsclepias curassavicaの葉につけてテストすると、オオカバマダラ(D.plexippus)の幼虫の死亡率が著しく高まることが最近明らかになった(Losely 他 1999)。アメリカとカナダで何世代ものオオカバマダラ(D.plexippus)が生まれる;東部個体群はメキシコで成虫として越冬する(Urquhart 1976)。メキシコで越冬するオオカバマダラの成虫の50%は、トウモロコシ生産が集中するアメリカ中央部から渡ってくる(Wassenaar and Hobson 1998)。これらの成虫のほとんどは、もともとトウワタ(A.syriaca, common milkweed)を食べていた幼虫である(Malcolm et al 1993)。少なくとも重複する3世代のオオカバマダラが毎年アメリカ中央部で確認されており、幼虫期である6月初頭から9月半ばまではトウワタの上にいる(Urquhart 1960;Borkin 1982)。トウワタは、通常オオカバマダラの幼虫がそれを食ることができる場所のトウモロコシ畑内及び隣接した非耕作地に生息している、(Cramer 及び Burnside 1982; Bhowmik 1994; Yenish 他. 1997; Hartzler 及び Buhler 2000; L.C. Hansen, 非公開データ) 。トウモロコシの花粉は植え付の日により初夏から晩夏にかけての1-2週間の間に作られ、風によって最低60m拡散する(Raynor 他 1972; Ritchie 他. 1997);以上のことから、オオカバマダラ、トウワタ、遺伝子組み替え花粉は、空間的及び時間的にアメリカ中央部で重複しているとみられる。

 我々の研究は次の3つを目的とする:(1)遺伝子組み替えコーンの畑内及び隣接地におけるトウワタ(A.syriaca)への遺伝子組み替え花粉のレベルを測定すること;(2)フィールドに拡散した遺伝子組み替え花粉に曝露したオオカバマダラ(D.plexippus)の幼虫の死亡率を求めること;(3)フィールド内で遭遇しうる遺伝子組み替え花粉の密度範囲で、オオカバマダラ(D.plexippus)の幼虫及び成虫への影響を定量すること。

材料及び方法

トウワタ(A.syriaca)への花粉の拡散

 アイオワ大学キャンパス内の区画2,500uに4種類のトウモロコシを植えた。植え付けは1998年5月及び1999年6月に行った。1998年には、各種トウモロコシを8-12列の畝(77m)に南北方向に植えた;1999年には東西方向の畝(35m)に植えた。トウモロコシの種類は次の通りである:(1) 遺伝子組み替え MAX 454 (KnockOut, Novartis Seeds)、event 176; (2) hybrid 4494 (Novartis Seeds)、 非遺伝子組み替え, MAX 454の遺伝子的類似種である; (3)遺伝子組み替え hybrid 7333Bt (YieldGard, Novartis Seeds), event Bt11; (4) hybrid 7333 (Novartis Seeds), 非遺伝子組み替え, hybrid 7333Btと遺伝子的類似種である

 1998年、圃場への花粉の拡散について、鉢植えしたトウワタ(A.syriaca)をトウモロコシ畑内及びトウモロコシ畑の境界から0.2m、1m、3mの地点に置くことにより測定した。1999年には5m、10mの距離も加えた。トウワタ(A.syriaca)は自然植生のものを27.5cmの鉢に移植したものであった。フィールドの研究に使用したトウワタ(A.syriaca)の高さは(鉢も含み)約50-100cmであった。トウワタ(A.syriaca)の葉から0.79cm2の円形部分をくり抜くためにA no. 6のコルク空け器を使用した。くり抜いた葉の円形部分は花粉の損失を最小限にするために水平に保った。1998年、7月29日から8月4日のうち3日間、12鉢のevent176の植物体から、それぞれ3つの位置(上部、中部、下部)の、それぞれ3枚の葉(先端、中央部、基部)から円形部分を採取した。eventBt11は8月11日から17日の内の3日間、その12鉢から採取した。1999年には、Bt11では7月31日から8月9日の内4日間、event176では8月4日から8月8日の内2日間で、それぞれ18鉢で上部、中部、下部からそれぞれ3枚の葉で基部と先端部の2部分から変形部分の採取を行った。採取した0.79cm2の円形の葉に付着した花粉の数を解剖顕微鏡で数えた。400個より多い花粉が付着していた場合、記録する値は400とし、これを花粉濃度が高いことを示すクラスとした。1枚の葉のサンプルに付着した花粉の数は花粉数/cm2で記録した。それぞれの種に付着した花粉の累積数は、そのデータに最も適した曲線で記録した。

圃場に堆積する花粉に曝露した幼虫

  圃場に拡散した遺伝子組み替え花粉及び非遺伝子組み替え花粉に曝露したオオカバマダラ(D.plexippus)の死亡率を測定するため、トウモロコシ畑内、非Bt (hybrid 4494)、event 176 (MAX 454)それぞれの区画の境界にあったトウワタ(A.syriaca)から、1998年8月1日と8月4日、葉の円形部分(0.79 cm2) を143個採取した。そのうち72 個の円形部分からは花粉を洗浄した。花粉が全部洗い流されたかどうかを確認するために円形部分を解剖顕微鏡で検査した。洗浄を行わなかった円形部分の花粉を数え、各々の円形部分をペトリ皿(直径5.2cm)の中にある湿ったフィルターの上においた。各円形部分(遺伝子組み替えn=35、非遺伝子組み替えn=36、洗浄済n=72)にオオカバマダラ(D.plexippus)の一齢虫を一個体入れ、48時間放置した。幼虫は円形部分の上においたが、行動の制限はしなかった:幼虫は葉の表面から食べることもできた。オオカバマダラ(D.plexippus)の幼虫は、フィールドから集めた個体から研究室内で孵化させたコロニーから使用した。

死亡率及び致死的影響の研究室内調査

 1998年7月29日〜8月19日に、トウモロコシの房に茶色い袋を被せ、トウモロコシ4種類の内3種類から花粉を収集した (Medico Enterprises, Kirkwood, Mo.)。hybrid 7333の花粉は採集しなかったが、これは春の洪水で少ない受粉しかできなかったためである。6-7日後、袋を被せたトウモロコシの房を茎から切り取りって24時間乾燥し、花粉をふるいにかけて分離して(300-?m openings)-20℃で9-10ヶ月貯蔵した。温室で簡単に生育し、オオカバマダラ(D.plexippus) の幼虫の宿主植物 として適していることからA. curassavicaを用いた(Zalucki 1993).

 遺伝子組み替え花粉(MAX 454, 7333Bt)と非遺伝子組み替え花粉(4494)の3つの密度は、圃場で観測された密度を再現たもので、10mlの蒸留水中に0.1, 0.01, 及び 0.001 gの花粉を溶解させることで得た。花粉はメモリ付10mlシリンダーの底に沈殿してしまうため、水と花粉が混ざるようにシリンダーを2回上下逆さにし、その後それぞれ0.05-mlのサンプルをピペットで採取した。花粉が溶解した0.05-mlの懸濁液のサンプルはA. curassavicaの1.54-cm2 の円形部分に取り出し、乾燥させた。0.01g/10ml濃度の0.05-ml水溶液における平均花粉数は208±12個(n=12)であった。0.001g/10ml濃度の0.05-ml水溶液における平均花粉数は22±1個(n=12)であった。0.1g/10ml濃度の0.05 ml水溶液では、花粉数は1,966個になると計算された。この個数は[0.01-g/10ml水溶液での平均花粉数(22)]×[係数比9.45]で計算した。この係数比は0.01-g/10ml 及び 0.001-g/10mlの濃度の溶液における花粉数の割合で算出したものである (208/22)。そして花粉数を1.54 cm2 (円形部分の面積)で割り、1 cm2当たりの花粉数を算出した。以上より、全実験で用いられた3つの花粉の密度はそれぞれ14個/cm2、135個/cm2、1,300 個/cm2となった。
 その後各々の円形部分はペトリ皿(直径5.2cm)の中の湿ったフィルター上に置かれた。オオカバマダラ(D.plexippus)の一齢虫を一個体、円形部分において21℃ L:D 16:8 hに保った。幼虫は葉の上においたが、移動できるようにしていたので円形部分の下からも食べることができた。48時間花粉へ曝露した後、幼虫をプラスチックの箱(1,224-1,354 cm3)に移し替えて、汚れが付着していないA. curassavicaの葉を毎日食べさせ、蛹化させた。12時間以内の幼虫(一回の処理につきn=10の幼虫)で一回生物検定を行い、12-36時間の幼虫(n=16 larvae per treatment)で一回生物検定を行った。円形部分へ移し替える前に、幼虫には自身の卵殻と汚れていないA. curassavicaの葉を自由に食べさせた。この実験に必要なオオカバマダラ(D.plexippus)の卵はカンザス大学のMonarch Watchで準備された。幼虫が成長する間、脱皮や死亡を12時間ごとに記録した。幼虫期にBt花粉へ曝露して生存した個体に対する致死的影響について調査するため、蛹の重さと成虫の乾燥重量、前翅の長さ、脂肪の量を測定した。蛹化して24時間後、それぞれの蛹の重さを測定し、成虫となって羽を広げられるように、X字状にはりつけた2本のfiberglass window screen を備えた450-mlのプラスチックのコップをさかさにした羽化室にその蛹を入れた (Monarch Watch 2000)。蛹は21℃ L:D 16:8 h に保った。羽化して24時間後、 それぞれの成虫を9.28.5 cmの封筒に入れて冷凍庫に入れた。羽根の根元にある胸部の白い斑点から先端までの右前翅の長さ(cm)を測定した(Donham and Taylor 2000)。
 成虫を60℃で24時間乾燥させた後、重さと脂肪を測定した。脂肪は、考えられうるBt花粉の致死的影響を計る指標として使用した。脂肪分を抽出するため、乾燥させた成虫を粉末状にすりつぶし、乳鉢に入れて、クロロホルム:メタノールの比率が2:1の混合液2 ml とともに乳棒ですりつぶした。およそ3 mlのクロロホルムとメタノールの溶液を、すりつぶしたオオカバマダラ(D. plexippus)に加え、その全混合物を試験管に移した。クロロホルムとメタノールの溶液2 mlをさらに試験管に加え、その混合物を一回目の反復実験では2時間、二回目の反復実験では24時間の間22-24℃に保った。二回目の反復実験で長い時間をかけたのは、成虫からより多くの脂肪を抽出するためである。この後、クロロホルム、メタノール、オオカバマダラ(D. plexippus)の混合物の脂肪分を10-mlのグラスウールを含むガラスピペットで漉した。クロロホルム、メタノール、脂肪の混合物を、あらかじめ重さを測っておいた試験管に移した;クロロホルムとメタノールをニトロゲンの一定の流れによって30-50℃で蒸発させ、脂肪の重量を測定した(Tuskes and Brower 1978)。花粉に殺虫性毒物が存在することを確認するため、Btコーンに対して特に敏感な性質を持つ種として知られる(Koziel et al. 1993) ヨーロッパアワメイガ(O. nubilalis)の幼虫で生物検定を行った。ヨーロッパアワメイガ(O. Nubilalis)の幼虫は、アイオワ州エイムズの米国農務省ARSのトウモロコシ害虫及び作物遺伝学研究部(Corn Insects and Crop Genetics Research Unit)で準備した。ヨーロッパアワメイガ(O. nubilalis)に対する遺伝子組み替え花粉の影響をmodification of a blue dye droplet分析試験を使って計量した。Max 454, 7333Bt, 及び 7333Btからの花粉はFDC Blue No. 1 coloring、蒸留水、Tween 80の混合物を使うと青く染まった(Hughes et al. 1986)。その後ヨーロッパアワメイガ(O. nubilalis)の一齢虫200個体以上に、染色したそれぞれの花粉を5時間食べさせた。その後blue digestive tracksを食べた幼虫6個体のグループを0.01 gの 湿ったフィルターにかけた同種の無着色の花粉を含んだ10個のプラスチックコップに移した。48 時間後、それぞれの花粉の種類における生存個体数と死亡個体数を記録した。1998年にMAX 454、7333Bt、4494から集めた花粉内のタンパク質CryIAbのレベルを定量するためにgdia Incorporatedから購入したキットを使ってELISA を実施した(Elkhart, Ind.)。ELISAは生物検定の後-20℃で8-9ヶ月貯蔵した花粉に対して行った。約10秒4Wで、Agdiaキット付属の抽出用緩衝液5 ml を60型超音波破砕機(Fisher Scientific Co) を用いてそれぞれの種の花粉およそ0.1gに超音波処理を3回行った。 その後15時間冷凍し、約5秒間超音波処理を行い、その後100 ?lのサンプルを採取してtest well内に入れた。

データ分析

トウワタ(A. syriaca)への花粉の堆積

 様々な距離におけるトウワタ(A. syriaca)の葉に堆積した花粉数は、variance分析によりそれぞれの種、それぞれの年に分けて分析した(ANOVA; SAS 1999)。Bt event 176, 非Bt, 洗浄した葉に曝露した幼虫の死亡率のパーセンテージは、 ANOVA (SAS 1999)により逆正弦変換を行った。

実験室内での死亡率と致死的影響調査

 オオカバマダラ(D.plexippus)の幼虫の、二つの異なる齢(<12 h 及び 12-36 h)のクラスでは、生存率、成長期間、成虫の形質に著しい差が見られたため、クラス別に分析を行った。Bt花粉に対する一回目の48時間の曝露をした後における幼虫の生存日数の測定には、LIFETESTとANOVAを用いた (SAS 1999)。花粉濃度の影響と花粉のタイプは時間中変化したので(ANOVA P=0.0001, df=9)、生存曲線の分析はLIFETESTを用いた。これはそれぞれの時間中における幼虫の死亡数はその前段階の時間中における死亡数と関連があるからである。LIFETESTは時間中の死亡危険性の分布について仮説を立てないで行う、ノンパラメトリックな検査方法である(Lawless 1982)。このテストの死亡率を比較する統計値はlog-rank 及び Wilcoxonであった;これらのテストは2分布に続き、ランク付けした値を比較する(Lawless 1982)。これらのテストの統計値はそれぞれの時間間隔を比較することによって2つの生存曲線を分析し、その2つの生存曲線が一致するだろうという仮定のもと、そこから死亡個体数が異なるかどうかを求める(Lawless 1982)。生存中のオオカバマダラ(D.plexippus)の幼虫の成長期と成虫の形質はANOVAで分析されtreatment effectsが求められる (SAS 1999)。それぞれの花粉のタイプとそれぞれの濃度はone-way ANOVAを用いて分析される。

結果

花粉のトウワタ(A.syriaca)への堆積

 1998年では、遺伝子組み替えの花粉の累積堆積量はトウモロコシ畑内で最高(花粉数74-217個 /cm2)であり、畑の境界から3mの地点では花粉数6〜20個/cm2に減少した(event 176, ANOVA P=0.0001; event Bt11, P=0.0017; Table 1)。1999年には同様に花粉の堆積はトウモロコシ畑内で最高(花粉数80-115個/cm2)で、3mの地点で花粉数5-7個/cm2、10mの地点で花粉数1個/cm2に減少した(event 176、 Bt11, ANOVA, P=0.0001)。サンプリングの間、1998年には84mmの降雨が8回あり、1999年には142mmの降雨が3回記録された(Anon 1999)。この降雨の回数と降水量の違いは、1998年と1999年における花粉の堆積の違いを生じる原因と考え得る。

 1998年には、鉢植えのトウワタ(A.syriaca)の上部、中部、下部の葉に付着した花粉の量はevent 176 (ANOVA, P=0.3551)と類似したが、eventBt11とは相違した。event Bt11の中部及び下部の葉からより多量の花粉が観測された。この理由は不明である。1999年には、event Bt11は上部、中部、下部の葉において付着した量が類似した(ANOVA, P=0.2348)が、event 176では中部及び下部の葉からより多量の花粉が観測された(ANOVA, P=0.0369)。

フィールドに堆積した花粉に曝露した幼虫

 フィールドのトウワタ(A.syriaca)に累積したevent176の花粉に48時間曝露したオオカバマダラ(D.plexippus)の幼虫の死亡率は、非Bt花粉処理をしたものは0%、花粉を洗浄したトウワタ(A.syriaca)の葉(ANOVA, P=0.0415)におかれたものは3±3%だったのに対して20±3%であった。死亡率は、葉の円形部分に付着した花粉数や植物の位置(トウモロコシ畑内であるかまたは境界部分であるか)に何ら相互関係はなかった。死亡率は遺伝子組み替え花粉数が10-306粒/cm2の葉の円形部分で確認された。1cm2あたりの平均花粉数はevent 176 で74±15個、非Bt処理で36±9個であった。

実験室内での死亡率と致死的影響の調査

 event176、event Bt11、及び非Btコーンの花粉に、1cm2あたり花粉数1,300個、及び135 個で48時間曝露した生後12時間以内の幼虫の生存曲線には、著しい相違が見られた(log-rank and Wilcoxon,P0.007; Fig. 1)。花粉数14個/cm2で曝露した幼虫の生存曲線は類似した(log-rank and Wilcoxon, P=0.3)。花粉数1,300個/cm2では、非Bt とevent Bt11の生存曲線が類似した:幼虫の40%が120時間まで生存した(log-rank and Wilcoxon, P=0.7)。しかし非Bt及びevent Bt11の生存曲線はどちらも、event176の生存曲線より著しく高かった(log-rank and Wilcoxon, P<0.05; Fig. 1a)。花粉数135個/cm2で非Bt花粉に曝露した幼虫の生存曲線は(120時間で死亡率0)遺伝子組み替えの花粉に対する生存曲線(log-rank and Wilcoxon, P<0.006; Fig. 1b)よりも著しく高かった。event176の花粉 (120 時間で30%が生存 )とevent Bt11の花粉(40%が生存)に曝露した幼虫の生存曲線は類似した(log-rank and Wilcoxon, P=0.6; Fig. 1b)。

 1cm2あたり花粉数1,300個(log-rank and Wilcoxon, P=0.005)及び花粉数135個(log-rank, P=0.03, Wilcoxon, P=0.04)で48時間曝露した生後12-36時間の幼虫の生存曲線は著しく相違した(Fig. 2)。花粉数14個/cm2での生存曲線は類似した(log-rank, P=0.98; Wilcoxon, P=0.96)。花粉数1,300個/cm2で非Btに曝露した幼虫(120時間で88%生存)の生存曲線は遺伝子組み替えの花粉に対する生存曲線に比べて著しく高かった(log-rank and Wilcoxon, P<0.05)。event Bt11 (120時間で44%が生存)及びevent176 (120時間で31%が生存)の生存曲線は類似した(log-rank and Wilcoxon, P>0.05; Fig. 2a)。同様に花粉数135個/cm2では、非Bt花粉(120 時間で100%が生存)に曝露した幼虫の生存曲線は、event 176 (63%が生存)あるいはevent Bt11 (75%が生存)に曝露した幼虫の生存曲線より著しく高かった (log-rank and Wilcoxon, P<0.05; Fig. 2b)。

成虫の形質

 花粉数1,300個/cm2でevent 176に曝露した幼虫はいずれの齢でも一個体しか生存しなかったため、その処理は分析対象からはずした。Bt花粉に曝露した生後12時間以内の幼虫の総発育期間は、全ての花粉の濃度、種類のものと類似した(ANOVA, P>0.118, df=7; Table 2)。蛹の重さ、成虫の乾燥重量、脂肪量、翅の長さは全ての処理で類似した(ANOVA, P>0.05, df=7) (Table 2)。同様に、生後12-36時間の幼虫の総成長時間は全ての処理で類似した(ANOVA, P=0.074, df=7) (Table 3)。蛹の重さ、成虫の乾燥重量、脂肪量、前翅の長さについても類似した(ANOVA, P>0.05, df=7; Table 3)。

 圃場で採取した、移動中のオオカバマダラ(D.plexippus)の成虫の脂肪量は30〜180 mg の間であった(Gibo and McCurdy 1993)。この範囲は我々が得た結果(9.7-19.6; Tables 2,3)より高かったが、これはおそらく我々の研究でオオカバマダラ(D.plexippus)を成虫として食べさせなかったからであろう。

実験室内実験で使われた花粉のBtレベル

 ヨーロッパアワメイガ(O. nubilalis)の幼虫の48時間での死亡率は、非Bt花粉(3±3%)と比べてevent176の遺伝子組み替え花粉に曝露していたもの(50±8%)の方が著しく高かった( ANOVAにより正弦変換したデータ,, P=0.0001)。

 ELISAは、hybrid 4494 (0.052 ?g Bt/g花粉)からの非Bt花粉で低いレベルの毒性を示した。この汚染は我々が花粉を採集し、移動する際に生じたとみられる。ELISAは、event 176の花粉が1gあたり1.60 ?g のBt花粉を含むことを示したが、これは環境保護局(EPA)から報告された値より低い(1999b)。我々が行った分析の濃度が低かったのは、おそらく超音波抽出順序と花粉を−20℃で貯蔵した際の時間の長さが異なったためであろう。event Bt11の花粉には1gあたり0.39 ?gのBt花粉が認められたが、これはよく似たevent MON810 (できたばかりの花粉の重さ1gあたり0.09 ?g)に関するEPAからの報告より高い(EPA 1999a)。このBt毒素のレベルは、おそらく我々が室内実験に使用したBt11の花粉に他種類の一部が入っていたからだろうと思われる。Bt11の花粉には(43±2%)、event176 (9±1%) あるいは 非Bt (0%) 花粉よりも多くの他の組織が含まれていた。このパーセントは、直径5.2cmのペトリ皿に拡げた花粉を、面積6mm2、重さ0.03±0.002 g の10個の花粉サンプルとしてとりだして顕微鏡検査を行い、それに基づき算出した。

考察

 この実験に基づき、我々は遺伝子組み替えの花粉は、トウモロコシ畑内あるいはその隣接地に生息するオオカバマダラ(D.plexippus)の幼虫に負の影響をもたらすということを、次の理由から予測する:(1) 我々は幼虫を圃場の花粉濃度を再現した花粉濃度に曝露させた結果、著しい死亡率を生じることを証明した、そして(2)圃場で遺伝子組み替えの花粉に曝露したことが原因と見られる死亡率で、我々が求めた結果は、我々は遺伝子組み替え花粉を幼虫に対し48時間しか曝露していないから実際より低くなる。晩夏に成長するオオカバマダラ(D.plexippus)の幼虫は、成長期間中ほとんど遺伝子組み替え花粉に曝露するとみられる;このため、遺伝子組み替え花粉に含まれる殺虫性Bt毒物に対する累積的曝露を考慮すれば死亡率はもっと高いはずである。遺伝子組み替えコーンの受粉時に幼虫の大部分がその畑内かその付近に生息しているはずであるから(Urquhart 1960; Borkin 1982; Malcolm et al. 1993; Wassenaar and Hobson 1998)、それとともにこれらの発見を考慮すると、遺伝子組み替えBtコーンの花粉によるオオカバマダラ(D.plexippus)の幼虫に対する影響は相当なものであることが示されるのでえある。

 ここから、トウモロコシ畑外部へのBt花粉の影響はどの程度なのかという疑問が生じる。1998年の6日間と1999年の9日間でトウワタに堆積した花粉の累積量に基づけば、遺伝子組み替えの花粉は少なくとも畑の境界から10m地点に生息するトウワタに堆積するはずである。オオカバマダラ(D.plexippus)に対する影響が最大になるのは、花粉の濃度が最大になるBtコーンの畑の内部、あるいはその境界から3m以内の地点にいて葉を食べる幼虫である(Table 1)。

 我々の研究で、トウモロコシ畑内のトウワタ(A.syriaca)に集積した花粉は幼虫の死亡を引き起こすことが明らかに示された。少量の雨が降っている時にBtコーン畑内で育つトウワタで認められる可能性がある濃度である花粉数1,300個/cm2での曝露、及びコーン畑内のトウワタ(A.syriaca)で観測した値である花粉数135個/cm2での曝露は、幼虫の生存期間を短縮した。生後12時間以内で花粉数1,300個/cm2に曝露した幼虫はBt及び非Bt花粉に曝露したときに高死亡率となった。この観測は、生後3日の幼虫をBt及び非Bt花粉に曝露させて行った遺伝子組み替えのBt花粉とオオカバマダラ(D.plexippus)の相互関係を調査した以前の研究(Losey et al. 1999)と異なる。この違いはおそらく非Bt花粉内にBt毒素がいくらか存在していたことと、実験に使用した幼虫の年齢によるものであろう。イベント 176の花粉内のBt毒性が強かったにもかかわらず(イベント Bt11の花粉の4倍)135花粉粒/cm2では、2つのBtイベントは同じような死亡率を引き起こした。Bt11の花粉は以前の報告(EPA 1999a)に比べて高レベルの毒性がみられたが、おそらくこれは花粉内に葯があったからであろう。Bt11 hybridの花粉は、他の2種類と同様の方法で収集、処理が行われた。花粉内に葯があったことはその種が自然にこれらの構造をshedすることを示しているかもしれない;であるから、非標的植物に堆積したBt毒素は遺伝子組み替えの花粉のみの報告より毒性レベルが高い可能性がある。

48時間の曝露して生存した幼虫の成長期間及び成虫の形質をみると、遺伝子組み替えのトウモロコシの花粉に対する曝露での致死的影響は示さなかった。成虫の脂肪の減少は、幼虫の食べる量が少なかった、あるいはBt毒素の摂取のために栄養を効果的に消化できなかったことを示すものと考え得る。移動中のオオカバマダラ(D.plexippus)の成虫はそのエネルギーを脂質から得ている(Cenedella 1971);であるから、幼虫期から引き継いできた低めの脂質レベルはメキシコに到達する能力を引き下げている可能性がある。同様に、成虫の体重の減少、翅の縮小も、成虫が移動をやり遂げる能力を引き下げる可能性がある。影響を受けやすい幼虫期に増加した時間、最終齢までに92-98%の死亡率が発生する可能性があり(Zalucki and Kitching 1982)、これもBt花粉への曝露の負の影響と考えられる。幼虫のBt花粉に対する継続した曝露で成長期あるいは成虫の形質に影響があるかどうかを求めるには更なる研究が求められる。

我々の研究はトウモロコシに基盤を持たない非標的影響を定量化する。 バチルス チュリンゲンシスの微生物起源の殺虫剤を広範囲に散布することによる非標的効果を示したこれまでの研究では多くの非標的鱗翅目に影響があることが示されている(Wagner et al. 1996; Whaley et al. 1998)。 したがって、トウモロコシ畑の周辺で夏の終わりに出現する幼齢期の感受性の高いこれらの腫にたいしては遺伝子組換えBT花粉の飛散が大きなリスクをあたえることを示している。 Wraight らは black swallowtail, Papilio  polyxenes (Lepidoptera:Papilionidae)はトウモロコシ花粉におけるBT毒素には感受性はないと報告しており、したがってBTトウモロコシの作付けによるリスクは極少だろう。 遺伝子組換え殺虫性作物は広い標的範囲をもつ殺虫剤に比べて比較的安全かもしれないが、もし標的害虫にたいするこれまでの殺虫剤使用が少ない場合は適当でないだろう(J.J. Obrycki et al., 未発表データ).。 例えば、1995年には、たった2.2%のアイオワのトウモロコシがヨーロッパアワメイガを対象として広スペクトルの殺虫剤で処理されたに過ぎない(Wintersteen and Hartzler 1997)。 これはあきらかにあらたな生態的脅威をもたらす。

 


謝辞
オオカバマダラ(D.plexippus)の卵、材料の植物、オオカバマダラ(D.plexippus)の飼育についてのガイドをいただいたカンザス大学のOrley Taylor博士、O. nubilalisの生物検定にご助力いただいた米国農務省ARSのLes Lewis博士、統計分析に協力いただいたアイオワ州立大学のKari Jovaag氏 及びDaniel Nordman氏、早期原稿に論評をいただいたコーンウェル大学のJohn Losey博士及びアイオワ州立大学のThomas Baker博士、ELISAに協力してくれたJustin Grodnitzky氏及びJason Belden氏、技術協力をしてくれたJohn Ohlfest氏に感謝いたします。Laura Hansen氏は、Graduate Research Assistantship from the Department of Entomology、アイオワ州立大学、そしてEPA STAR Fellowshipより協力を頂きました。

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