アメリカ西海岸に恐ろしい巨大クローン海藻、現わる

By 佐羽尾 友里


ー微生物や藻類の育種でよく用いられる、選抜とクローン化による方法で作出(育種)され安全審査なしに広められた藻類、カウレルパの一品種が海洋に逸出して増殖を続け、海洋の生態系を脅かすようになったという話。 これはあくまでも、遺伝子組換えで作られたものではなく、伝統的な方法で育種されたものである。 クローンというといかにも遺伝子操作のようなイメージを浮かべるが、実はセイヨウタンポポもクローン植物だし、一粒の種からふえた大豆やイネ、小麦といった自殖性の植物もクローンといえるし、ナットウの菌も、お酒やビールの酵母も一旦クローン化されて選抜された”優秀な”クローン株として使用されている。 陸上の世界では当たり前で、タンポポクローンはすでに生態系を塗り替えているし、観賞用に育種、移入され庭先から抜け出した草花が野原で野生化し生態系を脅かしているのは普通のこと。 これら植物フローラの変化で当然、それに依存する昆虫や他の動物も大きな影響をうける。 以下のアーティクルは、このようなまさに”野放し”の伝統的あるいは従来の育種の安全確保ができておらずしかも複数の遺伝子の協調的変異により種の基本的性質まで変えてしまうものであり、環境にとって遺伝子組換えどころではない脅威となる好例である。ーー SA

サンフランシスコ(ロイター通信)―それは海の流れの中でさらさらと輝く緑の絨毯のようだ。しかし、生物学者はそれを異国からの侵入者、あるいは土着の海洋植物を絞め殺し、魚類の生態系を破壊させ、沿岸生物群の生態系崩壊を招く殺し屋と呼んでいる。フランス、スペイン、モナコ、イタリアがくいとめようと地中海北部一帯に広げた努力もむなしく、Caulerpa taxifolia という海藻がカリフォルニアの水域で初めて点在が認められた。このことについて、その地域のこわれやすい生態系に対する新しい脅威を見張っている環境保護論者と海洋学者の間で非常事態が叫ばれている。
  「潜在的ダメージについては、この種は非常に、非常に深刻な問題です。外部から入り込んできて、通常その海底に見られたすべての種を追い払い、その生息地を独占する唯一の種になってしまうのです。」と、ナショナル海洋漁業サービスのロバート=ホフマン氏は木曜日に語った。数週間前、サンディエゴから約20マイルほど北部の海岸沿いにある潟のアマモ群の中で、海洋生物学者は初めてその種の北アメリカ版サンプルを発見した。

  科学者は、この潟での群生は隔離されたケースであり、今のところその海藻が岸に沿って海へ広がった徴候はないと強調する。しかし、多くの海洋生物学者は、その生命力の強い海草――もともと家庭の水槽内でかわいく見えるように技術改良された海藻――が沿岸で支配力をもつのは時間の問題だろうと怖れている。その海藻は、その地帯における海洋生態系の基礎をなすアマモやケルプの層を危険にさらす可能性を持っている。

 「一旦それがコントロールできなくなると、本当に手の施しようがなくなってしまいます。それで私達はできる限り早く行動を起こしているのです。」とホフマン氏は言う。



恐ろしいクローンがモナコに逃げ出す


海藻が出足好調の場合に何が起こるかという実例として、科学者は地中海北部に注目する。 Caulerpa taxifoliaという海藻は、もともと海水の水槽内で装飾用に使用する成長の早い植物として注目された。その種をより強くしたクローン版が、1980年代初期にドイツのシュツットガルト水族館のディスレイ用に開発され、そしてフランスのモナコの水族館にも装飾を美しくするよう導入された。ところが1984年頃、その一部がモナコ海洋博物館から地中海へと逃げ出したらしいのだ。その海藻は、最初は約1.2平方ヤードぐらいであったが、1989年には海の2.5エーカーを占めるまで拡大してしまった。

今日ではCaulerpaは地中海北部一帯に広がり、観光やダイビング産業に痛手を負わせ、土着の海中植物をおしのけ、魚介類の個体数に影響を及ぼし、漁業網にからみつくなどの被害を出している。もともとのCaulerpaは繊細で装飾的な植物であったようであるが、ヨーロッパのクローン版は機略に富んだ恐るべき宿敵である。成長すると長さ10フィートにまでなり、より深く寒いところでも生き延びることができ、水がなくても最大10日間まで生息が可能だ。また、その海藻は毒を持っており、人間に対しては害がないが、ある種の海洋動物の卵に入り込んで多くの微生物を殺すことができる。


「アストロ芝の絨毯」


科学者はその海藻の伝来を、海底に沿って「広がるアストロ芝の絨毯」に例えている。ここでは、吸収できる栄養はすべて吸い上げられ、他の種が絶滅へと追いやられている。ナショナル海洋漁業サービスのホフマン氏は、おそらくその海藻がカリフォルニアへ侵入したのは、誰かが水槽を雨水排水管に空けたことから始まったのだろうと言っている。そして海藻上に防水布をかぶせて除草剤を散布するという、この侵入者を撲滅する処置も進行中であることも述べた。

サンフランシスコ河口学会の海洋生物学者アンドルー=コーエン氏は、1999年にCaulerpaを「有害な草」として米国に輸入を禁止させる大運動を先導し成功させた人で、今回サンディエゴで海藻が発見されたことは、必ずしもカリフォルニア沿岸の生態系が絶滅することを意味しないと言っている。コーエン氏は、「伝来初期で根絶が可能であるといういい状況にある」という。しかし、この脅威は世界の相互につながった生態系のこわれやすさ、ごくありふれた水槽が広大な範囲の海を破壊させる重要な鍵とさえなるのだということを示す例となったと言っている。「こういった恐ろしさについてもっと教育が必要です。このクローンは国内の水槽や店であちこちに出回っているので、かなりよい好機なのではないでしょうか。」と彼は言っている。


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