伝統育種は種の壁を破る

伝統育種が大木をも切り倒す大斧とすれば、遺伝子組換えは小枝に細工をする精密な彫刻刀であるーBy SA    2000ー07ー22

 

 多くの方々は遺伝子組換えは種の壁を越えると危惧されている。 確かに、導入遺伝子は色々な種から持ってこれるのでそう思われるのも当然かもしれないが、ひょっとして皆さんは、ある生物に一つでも他の生物から来た遺伝子をいれたら別の生物になると思ってはいないだろうか。 たとえば、人間にサルの遺伝子を一ついれたらサルになると。 ところがひとつ重要なことがある。 それは、異種遺伝子が入ったからと種はそう簡単には変わらないということである。 さらに導入遺伝子が種の壁を越えることは自然界でも起こっており、我々の遺伝子の中にもそういう痕跡が見つかるがそれで種が変わるのは難しい。

  ところが、突然変異や交雑では生物種が簡単に変わってしまうことがある、たとえば、ナタネとキャベツの類は別種であり、染色体数(18本と20本)も違うこれらが交雑したことによりセイヨウナタネという染色体数38本の新種ができた。 マツヨイグサは突然変異と交雑で倍数体や異数体が生じ、オオマツヨイグサはじめ何種類かに分かれてしまった。 ミカンの類が多種類に及んでいるのもそういったことから生じている。 動物では、種間雑種であるレオポン(ヒョウとライオン)、ラバ(ロバと馬)などがある。 また、野性ニホンザルと持ち込まれたタイワンザルが交雑してニホンザルの固有種を脅かしている。 トキは中国産種と日本種の雑種を作ることになってしまった。 生態系に悪影響が及ぶと懸念されながら真珠のアコヤガイも中国産亜種と日本産種を交雑せざるおえなくなった。 これらは伝統育種により種の壁を越えたもののほんの一例であり、明らかに両方の異なる生物種の特徴をもつ。種は変わらないまでもスイートコーンは遺伝的に普通のトウモロコシとだいぶ違う。  現在の栽培作物や家畜が伝統的方法で作られ、原種とは別種となっているものも多い。逆説的に聞こえるが、生物種を変えるためには伝統育種が極めて有効なのである。”伝統育種品”こそフランケンフード

  しかし、除草剤耐性の組み換えナタネや大豆、あるいはBtトキシンを組み込んだトウモロコシなどは異種生物の遺伝子を組み込んだがどう見ても、ナタネはナタネ、大豆は大豆、トウモロコシはトウモロコシである。さらにEUで大騒ぎになった、組換え作物と非組換え作物の交雑の結果は遺伝子を詳しく調べない限り、区別はつかずどうみても種は変わっていないし、将来変わりそうにもない。 どうして種の壁を越えたのに種が変わらず、種の壁を越えないはずが種が簡単に変わってしまうのか。 あるいは、伝統育種では遺伝的変化が遺伝子組換えよりずっと大きいのか。 遺伝子組換えは種の壁を越えた育種方法であり、伝統育種は種の壁を越えない方法と教えられたのに不思議である。

  伝統育種で用いられる交雑や突然変異では極めて多数の遺伝子や異なる染色体が変異、導入されることにそのカギはある。 すなわち、生物種を変えるためには多数の遺伝子が導入・変化、再編する必要があり、伝統的な方法ではそのような遺伝子導入や再編が容易なのである。 ときにこの変異、導入される遺伝子の数は数百から数万にもおよびその遺伝的インパクトはきわめて大きい。 1-数個の遺伝子を変えただけでは種はそう簡単には変わらないのである。 それで、遺伝子組換えの場合は、除草剤耐性とか目をみはる変化が起こるのにその他の性質は相当精密に調べても変化は認めがたく、遺伝子や染色体の大規模な再編も起こりにくく到底種が変わるなんてイメージは出てこない。導入遺伝子が種の壁を越えることは自然界でも起こっており、我々の遺伝子の中にもそういう痕跡が見つかるがそれで種が変わるのは難しい。 したがって、伝統育種は真に種の壁を越える大胆な手法であり、遺伝子組換えは種の壁を維持する精密な育種といって過言ではないだろう。 ところが一方では、種の壁どころか品種の壁を越えることが遺伝子組換えでは難しく、キヌサヤエンドウとグリーンピース、男爵いも(ジャガイモ)、あるいはスイートコーン、イネさえそれぞれの原種からつくり出すことができないのである。 

  これらのことから、遺伝子組換えは種の壁を崩す、あるいは変えてしまうような危険性(リスク)を大幅に削減した、ほしい性質のみを導入する方法であるといえるのである。 種の壁を越えたといたってその結果、どうなったが大事ではないだろうか。 たとえて言えば、伝統育種が大木をも切り倒す大斧とすれば、遺伝子組換えは小枝に細工をする精密な彫刻刀である。 総合的に考えると”遺伝子組換えを使ったから小さくてもリスクが必ず増える”というのは誤りであるといえる。


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