伝統は常に安全か?−−スルメと野菜の食べ合わせで胃がんにー胃がんの最多国、日本に注がれる熱い視線

ここで伝統リスクの例をひとつ。 日本は世界中でも胃がんのもっとも多い国だから、世界の研究者がその原因に興味をもっていた。 一部の人たちは食品添加物が原因だと禁止をもとめ結構消費者にも受けた。 ところが、すでに明治の初期から胃がんの病理解剖例が最も多いという記録が残っている。 食品のガンは発症に10年ぐらいを要することを考えると、幕末にすでに合成食品添加物が多量にあったのだろうか。 答えは”ノー”である。 で結局、日本の伝統食品の中に特有の発ガンリスクがあることになり、くわしく調べられた結果、なんとそれは魚の干物に普通に含まれる、魚系だしや干物の芳香のもとでもあるジメチルアミンなどの二級アミンだったのである。 では、2級アミンというものがどうして発ガン性をもつかというと、もうひとつは野菜に含まれる硝酸塩が必要である。この硝酸塩も化学肥料だけでなく有機肥料過多(窒素過多)でも蓄積する。 で、日本の消費者の健康の安全に責任をもつ方々や団体は魚の干物を売ってはいけませんね、有機野菜にも注意が必要ということになる。また、欧米ではガンの発症がここ30年にわたって減少しているのに日本では少しづつ増えている。 現在は動物性脂肪摂取の増加が取りざたされている。  日本では喫煙でのガンの発症も増えている。 タバコと魚の干物の規制を食品添加物なみにする必要がある。  このような危険性は1970年ごろには国の機関の研究者も含めて充分に認識していたのである。 

 では、タバコは別としても、どうしてこんなことを厚生省や消費者団体は見過ごしてきたかであるが、理由はよくわからない。 むしろハムやソーセージを無添加にする方向に大衆運動を誘導したというイデオロギーの問題が指摘されている。 ヨーロッパでは、この干物のリスクよりは食品添加物である亜硝酸による害のほうがはるかに大きかったから、ヨーロッパではたしかにハムやソーセージを無添加にすることは最大の課題であったことは事実である。 ”輸入型”運動を中心とするは日本では、”輸入された危険性”にのみ目を奪われ、日本自体がもつ危険性に目が行かなかったのかもしれない。  それとも、野菜と魚の干物の食べ合わせは日本の一次産業の基本でありアンタッチャブルであったということだろうか。 この感覚は、何十倍もの危険性は放置して食品安全論を推進するという奇妙なリスク感覚の原点でもあるようだ。

 本来ならば、米国が動物脂肪の摂取がガンと相関が高いとして国をあげてその摂取の抑制と取り組んできたのに比べると、日本では、この最大の食品由来のガンリスクと取り組もうとはしないのである。 スルメやタラコや煮干や干物の流通を制限することにyり業界から激しい反対を食らうのをおそれているのか。 同様のことは動物性脂肪やタバコでもいえる。 こういったリスクを放置する一方でより安全なものを切り捨てる姿勢がつづくならば、日本のガンの死亡率は、欧米の傾向とは逆に増えつづけるだろう。 研究者は、大衆を驚かしてはいけないという誤った良識は捨てるべきである。


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