遺伝子組換え植物の生態系に与える問題

 

T 生態系の成り立ちの歴史の概観 

 

1.     生命の歴史と環境

2.     シダと恐竜、被子植物と哺乳類、花と昆虫―生物間の連携 最大の優位は人間に気に入られること。  動物にメリットを提供し種を運んでもらったり、栽培してもらったり。

3.     移入生物のインパクトー大航海時代以降の生態系霍乱

4.     育種と農園芸が及ぼしてきた影響

 

U  農業と自然と環境

1.     農業とは人間の生活の場である(5000年ぐらい前から)

(ア)                 植物:農作物

(イ)                 動物:家畜

2.     森林原野の開墾、放牧、焼畑による自然破壊

3.     地球温暖化と人口増加

 

V  自然の分類

1.     野生と原生の違い

2.     われわれの考える自然は実はさまざま

3.     環境とはすみわけデザインの問題

 

W 遺伝子組換えが環境に与える種々の要因とその評価

 

遺伝子組換え反対派が主張している内容

1. 実質的同等性の否定

2. 種の壁を越える

3. 遺伝子の水平移動

4. スーパー雑草ができる

5. クロスポリネーションで遺伝子がリークする

6. 遺伝子の水平移動がおこる

7. 読み枠がずれるなど遺伝子が安定せず予期せぬ影響がある

8. 有害成分ができる

9. 生態系へ悪影響をおよぼす

10.    技術が未熟である

11.    まだ十分に解明されていない

12.   その他

 

ところがこれらはすべて交配や突然変異や選抜育種などの伝統育種における問題点であることに留意すべきである。 また、従来技術との比較は不要と言う意見があるが、新技術は従来の問題点や限界を克服する目的で開発されるので、 開発の過程では勿論、その結果においても従来と比較するのが当然である。

 

技術の結果の産物の安全性評価の重要性

原子力技術の安全性とは議論の性質を異にする。 原子力はその一般的産物=電気の安全性は、従来法で得られるものと同じであるから、その発電過程の技術の安全性のみを問題にするが、遺伝子組換えの産物は、伝統あるいは従来の育種・選抜の産物と同様、自己増殖性をもつ各種生物でる。伝統育種であろうと得られた個々の生物の性質が極めて重要である。 技術自体が残留するのではなく、これら生物の増殖には生物学の法則が等しく適用されるので、導入遺伝子の産物や得られた生物の安全性の比較が方法の如何をとわず重要である

 

X  遺伝子組換えの安全性を議論する前に知っておかなければならないこと

 

1.     我々が遺伝子に対してしてきたことをまず理解することー遺伝子組換え技術は、突然天がから振って沸いてきたものではない

2.     遺伝子組換えのときのみ分子生物学的法則に支配されるのではない。分子生物学の原理は遺伝子すべてに適応される。―分子生物学は生物界すべてに適応される“万有引力”の法則のようなもの

3.     伝統育種は種の性質の混合を前提とする―伝統育種は種の壁を崩す

4.     遺伝子組換えは導入したいあるいは改変したい性質をつかさどる遺伝子のみを導入する技術である。―種の壁を越えることと種の壁を崩すことを混同してはいけない

5.     ひとつの生物では遺伝子の数は数万個、遺伝子DNAの塩基数は数億―数百万塩基対である。このうち数個、塩基対にして数千塩基対が遺伝子組換えにより変化するのみ、したがってこれが問題を起こす確率は数万分の一以下である―他の遺伝子も等しく問題をおこすなら起こす。

6.     伝統育種は染色体(遺伝子数百以上)あるいはその断片の単位で遺伝子を動かし、組み換える技術―伝統育種が木を切り倒す大斧であるとするなら遺伝子組換えは精密な飾りをほどこす彫刻刀のようなもの。

7.     生物学上の現象には物理学あるいは工学のような絶対標準をおくことは困難。―絶対安全とか絶対危険とかいう、無限大あるいは無限小にたいする定量的な収束値が得られないー常に相対論となる。

8.     生物界の基本は生存競争

9.     生態系が変わったということの中身が大事―変わったらいけないのではなくどう変わったが問題である。 たとえば害虫がいなくなれば生態系は確かに変わる―当たり前のことで驚かないこと。

10.  遺伝子組換え生物なみの安全審査を伝統育種に課せばほとんどのものが不合格になるほど伝統育種の安全性は確立していないこと。

 

Y 従来からある(今後も同じ)環境に与えるリスク

1.       農耕、牧畜

2.       農園芸や鑑賞、ペット類の生物。 農作物や観賞用花卉など

3.       これらの育種、移入

4.       これらの自然あるいは人為的交雑、突然変異

5.       農薬の広範囲の散布

6.       建設

7.      レジャー、リゾート

 

Z 非組み換えによるリスクの例

1.           トキの絶滅と中国産種との交配

2.           宇和海の真珠貝の例―中国産の亜種との交雑化

3.           タイワンザルとニホンザルの交雑

4.           ラバ(オスのウマとメスのロバ)、レオポン(ヒョウのオスとライオンの雌)などの強制交雑。 現在のところ繁殖力なしだが。

5.           農薬に対する突然変異による耐性の獲得はすでに深刻に

6.           不完全な病虫害防除による毒性物質の生成・蓄積

7.           幾万もある遺伝子の水平移動

8.           セイヨウアブラナ、セイタカアワダチソウなどの外来植物の雑草化

9.           天敵利用によるもの

10.    はちみつにみる植物花粉や蜜のリスクと周辺環境

11.    密輸による生物および病虫害の拡散

12.    地球温暖化による病虫害、疾病の増加

 

[ 生物的要因としての遺伝子組換えの位置づけ

 

1.           遺伝子組換えは伝統育種、従来技術の限界をまかないより安全にその限界を拡張する技術であり何万とある遺伝子のうちの1−数個を操作するあるいは必要なセットのみを操作する。

2.           農園芸作物として長い栽培の歴史のあるものは雑草化しないことが多い。 遺伝子組換えの場合は雑草化しない作物を選んで行えばさらに効果的に封じ込めることができる。

3.           遺伝子組換えでは、生物種の大まかな性質は変えない特徴があることは以外と見過ごされている.その開発自体、最小限の変異で形質転換するという目的すなわち、生物種の壁をむやみに壊すリスクを除去することが一つの主眼であった。この点が細胞融合や胚培養などと異なる。交雑育種や突然変異の場合、以外と簡単に生物種の壁を崩して変更してしまうあるいは、種としての基本性質を変えてしまう難点がある。

2.           育種や選抜をしたとき安全審査をきちっとしなければならないーカウレルパ、セイタカアワダチソウの例

3.           農地と非農地あるいは自然として残す地域の区別は重要でこれらの区分を無視した絶対的自然保護は人類の生存と反する。

4.           自然交雑の影響―伝統育種や移動によるものが大きい。遺伝子組換えでの限定的導入がこれらのリスクを超えるとは考えにくい。 そもそもこれが遺伝子組換えの目的である。

 

従来からの生物利用や育種―目的外性質については食用や頒布、栽培のあと研究されるー無認可大規模実験といっても過言でない。 実質的同等性はむしろ伝統的手法において無意識に使われてきた概念である。―品種改良の安全審査免除?

\  作物に殺虫成分を組み込むことの環境へのインパクト

 

殺虫成分を組み込んだ植物では、その植物を食害することではじめて害虫駆除が行われるし、やり方によっては害虫との共存も可能である。 害虫でも我々の作物に“手を出さない限り”殺されない。 また、農地外の自然界では多様な生存競争や生存要因があり、このような遺伝子が拡散し生態系を変える優位性はない。

  一方、殺虫剤の散布ははるかに広範囲に影響を及ぼし、特に作物を食害しないものも多数殺してしまう。 

 

X 作物に除草剤耐性を与えることの環境へのインパクト

除草剤耐性は従来法である変異誘導で作出する方法と遺伝子組換えで作出する方法があるが、どちらも交雑や環境影響に関しては同じである。 最近の統計によれば45カ国で、遺伝子組換えとは無関係に216種の除草剤耐性雑草が出現している。特に同じ除草剤を使いつづけていると耐性が出やすい。

 

伝統手法により出現した除草剤耐性雑草の種類数

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地域           除草剤耐性

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USA            80種

Canada、Australia      32種

France            30種

その他           74種

――――――――――――――――――――――

 農地では、除草剤の種類や耐性作物の組み合わせを変え、また作付けをローテーションし除草剤耐性が問題にならないようにしなくてはならない。今後、同じ除草剤をまきつづける必要がないよう安全な除草剤の開発の継続とそれに対応した除草剤耐性作物のライブラリーを遺伝子組換えや突然変異などで増加し、計画的ローテーションをはかっていく必要がある。 作物ごとに特異性の高い、環境中で分解しやすい薬剤は、一般に容易に耐性を獲得されやすいからである。 ただし、突然変異育種の場合は何が起こっているかそのままでは分らないので慎重に安全性をチェックする必要がある。

この問題は常に除草剤がまかれる農地内での問題であり、除草剤をまかない自然の原野では植物が除草剤耐性を持つこと自体は何の意味もない。

 

X1 まとめ

 

 遺伝子組換えは従来技術と密接な関係があり、また、その問題点を解決し相補完するために開発された方法であるから、使用にあたって従来技術、あるいは伝統技術との間でリスクとメリットを比較検討していかなければならないし、適材適所を考え乱用を避ける姿勢は重要である。 また、従来技術がもたらした利益とともに種々の安全性や環境問題が山積みしている現状を考え、これらバックグラウンドにあたるリスク管理と連動した形で総合的なモニターリングをバランスよく冷静に行っていくことが重要である。 さもなくば、従来型リスクと遺伝子組換えに固有のリスクの分離ができず、誤った結論を招くであろう。 特に、伝統育種や従来技術においては、これまで多くの問題を起こしてきたにもかかわらず安全審査という考え方が確立しておらず、もしこれら伝統技術に遺伝子組換え並の安全審査基準を適用すれば多くのものが不合格となることを充分に銘記する必要がある。 くれぐれも論が極端にはしり、大嵐のさなかに巨大波の表面に起こる雨粒が立てるさざなみが船を沈めるかどうかを議論するような愚は避けたいものである。

 

 

付録: BTトウモロコシの環境影響についてのグリーンピースが行った訴訟に対する結果―BTトウモロコシは環境を改善する効果がある

 

10:19 AM - Jul 26, 2000 EDT
Biotech Industry Organization hails dismissal of Greenpeace lawsuit against EPA

The Biotechnology Industry Organization (BIO) today released the following statement regarding dismissal in federal court of a Greenpeace lawsuit against Bacillus thuringiensis (Bt) crops:


"Dismissal of the case against the Environmental Protection Agency (EPA) affirms the EPA's regulatory policies and its past scientific findings that Bt crops are safe for the environment and, in many cases, enhance environmental quality," said Michael J. Phillips, BIO's executive director for food and agriculture. "The dismissal also demonstrates that the plaintiffs in the lawsuit were not able to produce credible scientific evidence to support their charge that the EPA acted negligently in approving Bt crops."

The lawsuit against the EPA was filed in 1997. The agency issued a 100+ page response in April 2000 detailing its past and ongoing science-based evaluations of Bt crops that refuted every argument that Greenpeace had made. In fact, not only did EPA find no valid data demonstrating adverse effects on Monarch butterflies or other non-target organisms, to the contrary, EPA concluded that the available scientific evidence indicate that Bt crops have a positive ecological effect when compared to likely alternatives. BIO and its members also filed responses in the case.

Biotechnology crops and foods have been the most tested and analyzed farm products in history. In addition to the EPA, these products are reviewed by the U.S. Department of Agriculture and the U.S. Food and Drug Administration.

For more information on Bt crops and agricultural biotechnology visit BIO's Web site, www.bio.org. To view EPA's rebuttal of Greenpeace's arguments, go to (http://www.epa.gov/oppbppd1/biopesticides/news/news-greenpeace.htm.

 

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