さらに別の角度から従来育種(伝統的育種)と遺伝子組換え育種について考えてみましょう。

  現在の遺伝子組換えの是非の議論を聞いていて非常に重要な混同があることにきづきます。  

T.手法としての問題点と結果の問題点の相違の重要性

まず、遺伝子組換えの手法自体への問題提起とその育種がもたらす結果の危惧の二点です。 特に、前者については正しい情報も多いのですが後者の第二の点については大変な間違いが語られています 本来、遺伝子組換えであれ従来育種であれ結局は耐病虫害性なり薬品耐性なり品質改良なりの効果の有る遺伝子を導入するわけですから、その遺伝子の産物と働きの問題点を議論すべきです。そうでないと大変奇妙な自己矛盾に陥ってしまいます。 すなわち、遺伝子組換えの危険性を力説していくうちに気がついたら自分たちが普通にたべているものが危険だということになってしまったという話です。

 

2ー従来、組換え問わずすべての育種品は安全審査を受けるべきである

先日、新聞でアレルギーが心配なので高いお金を払ってでも遺伝子組換え食品を避けることにしたというインタビューがのっていましたが、これを読んだ私は”高いお金を払ってまでなんとお気の毒に”と思ってしまいました。従来育種品では、どんな遺伝子やその産物が入っているかほとんどノーチェックで我々が摂取したことがないものだって平気で使っているのに安全性なんか調べていないのです。 ただ消費者が知らないだけです。たとえば”おいしい品種です”なんて表示にアレルギー性のチェックなんてありませんし、知らないうちに品種が変わっている(すなわちアレルゲンの量や性質が変わっている)ことだって多いのです。  一方、遺伝子組換え品の場合はアレルギー原についてもできる限りのチェック済みでむしろ安心なのですが。

 わかりやすくいえば、もし遺伝子組換えにより遺伝子が導入されればその産物は危険なので安全審査しなくてはならないが従来法によって同じ遺伝子をなんとかして導入し同じ産物が生じていても安全であるので審査はいらないということになってしまいます。 皆さん何か変ではないですか。 そうです。従来育種であっても本来育種しその作物にとって未知の遺伝子を導入すれば安全だという保障はなく、本来、すべての育種に対し安全性のチェックが必要なのです。ーーー>組換えトウモロコシに使われたBTトキシンについて参照してください

 いや、そんなとんでもない遺伝子は従来育種ではできないよというかもしれませんが、あなたは育種の専門家ですか。  もちろん現在組換え作物に用いられるものとまったく同じものはないかもしれませんが、眠っている遺伝子だってたくさんありますしいろんな突然変異や交配技術を駆使すれば新しい遺伝子を作れる可能性があるのです。そして、このようなことには遺伝子組換えのような明確なガイドラインや審査はないといってよいのです。 また、その環境や我々がかつて接することのなかった生物から未知の遺伝子を従来育種であっても導入することが多いのです。このようなマクロな方法は遺伝子組換えよりはるかに不確定の要素が大きくどのような副産物ができるか予測しがたいものです。そして、現在のの安全性議論の中で抜け落ちている重要な問題です。

従来品も含めて新たな育種をしたものはすべて、少なくとも遺伝子組換えと同じように安全審査すべきであります。ーー今の分子生物学の知識と技術をつかえば伝統的育種での導入遺伝子の産物の毒性の解明や評価が比較的短時間にできるからです。 ーー>伝統的育種における偉大な錯覚

  たとえば、花を散りにくくしたり果実が落果しにくいような作物を遺伝子組換えで作製できますが、同様の遺伝子の変異をその気になれば従来法でも実現できるはずです。ただ、従来法の場合は遺伝子産物や作用などについては不明のままです。そして、結果としてどうして遺伝子組換えより安全だといえるのでしょうか。 環境への変異遺伝子の拡散の危険性は遺伝子が同様であれば、方法の如何にかかわらず少なくとも同じことぐらいはすぐおわかりになるでしょう。  従来育種による変異は無害で、しかも環境に拡散しないという保証はどこにあるのでしょうか。

  トマトは虫に食われるとそれを感じて植物体全体に虫に対して有毒な物質を生産し以後の虫害を避けようとします。 したがって、従来育種によりこの機能を強化した場合BTトキシンと同様昆虫にとって有害な物質を多く生産する植物となってしまいますが、組換えでないので環境への影響や遺伝子の拡散はないと断言できるのでしょうか。 おなじ機能遺伝子を従来法で導入すればなぜ無害だと断言できるのでしょうか。 ほかに、大豆などの豆類ではいくつかの毒素をもっており種子の貯蔵中の虫害や感染を防いでいると考えられます。これらの豆毒のため、豆類はなまで食べないのです。 そこで、伝統的育種で薬がなくてもより貯蔵性のよい豆類を育種したらひょっとするとこれらの毒素が増加しているかもしれませんし未知の毒素ができているかもしれませんが、遺伝子組換えではないのでノーチェックでよろしいのですね。

   霜降り牛の育種は健康上有害であることはその成分から明らかですが遺伝子組換えでないので安全な食品ということになりますがいかがでしょうか。

  また、従来育種も含めて育種は生産に都合のいいようにで行われることが多い(結果的に消費者の利益につながると信じて)ことをお忘れなく。−−

  アレルギーについてはノーチェックの普通の育種品のほうが問題だということをおわすれなく。少なくとも、食品アレルギーは遺伝子組換え以前からの問題であることぐらいよくご存知でしょう。

 以上のように重要なのは手法が持つ問題点と、結果の持つ問題点を分離することです。両者を混同すると非常におかしな議論となり、しかも議論のスタートの理念(この場合は職や環境への安全性)と自己矛盾を犯し滑稽ですらあります。そして、不条理な不安のためにあるいは”あおり”のためにより高いお金を払ってより高いリスクを抱え込むおろかなことは避けたいものです。

   結論を申しますと、従来の育種は実はみなさんの健康や環境に悪影響をおよぼしておりあるいはその可能性が否定できず、これを救うのが遺伝子組換え育種であり導入される安全評価手法であるということであります。ーー少々きつすぎましたかな。 しかしこれが現実なのです。

伝統的育種における偉大な錯覚   

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