遺伝子組換え生物利用に関する基礎的知識  

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なお、このページをよりよく理解するためには、遺伝子組換え以前に環境破壊と健康被害の主原因は何かをあきらかにし、食糧生産と健康や環境問題の現状と方向を警告した、名著”沈黙の春(Silent Spring)を読まれることをお勧めします

   育種ホーム ライフサイエンスホーム 研究室ホーム   魔女狩りと狂牛病と遺伝子組換え      地雷のある道

 ここでは、少々異なる立場から遺伝子組換え生物利用に関する概念的問題を展開します。 読む人によっては少々シゲキックスに感じるかもしれません。また、多くの方々が持っている遺伝子組換えについてもっている”不安”を”絶対悪”として位置付けようとする動きの側面があることも育種の安全性問題の正常な議論に大きな影をおとしているのです。 そこで、伝統的育種や現代農業のもつ本質的な問題をできるだけ専門的でない方法で説明し、なぜ遺伝子組換えなのか、そして遺伝子組換え生物の食品や環境での安全性をどうとらえたらよいかを解説します。

*食品としての安全性生態系への影響  生物多様性について

狂牛病と肉類のダイオキシン汚染と遺伝子組換え議論ー”フランケンシュタインの食べ物”ーはなぜかみあわない?

フランケンシュタインはヨーロッパの心の中の産物、非実在による危険な中傷

 


T 食品としての安全性  ("安全"とは?遺伝子組み替え大豆、免疫に影響なし

トウモロコシのパラドックス(組換えBT-とうもろこしは健康食品)  栄養学史上に残るエピソード

 伝統的な育種は本当に安全かーー>伝統育種の原理の図解

  意外と多くの消費者に知らされていないのがこの点です。すなわち、作物を品種改良するということは遺伝子を何らかの方法で組換えるわけで一般の育種法でも遺伝子組換えと同じぐらいのリスクがありますが、長年やっているので事実上ノーチェックになっているだけで育種従事者の自由裁量に任されているといってよいでしょう。また、伝統的育種では、近縁種との交配で必要な遺伝子のみならず、交配相手の遺伝子セットすべてすなわち不要な、しかも未知の遺伝子、有害遺伝子(これらをまとめてSnowfall遺伝子と呼ぶことにする)も含めてまとめて導入し、さらにこれらの両方の遺伝子が相互に組み換わって”混合”するのが前提です。 

  導入したい遺伝子をもつ相手側にも数万個の遺伝子がありますが必要なのはこのうちの1−数個なのですが、これらと育種したい側の植物の遺伝子群とは交配の後、任意に組み換わりいろいろな交差や染色体間の乗り換えすなわち遺伝子の組換えがおこります。さらに安定な位置をもとめて遺伝子が核内を数代にわたって”Jumpig Around”することもあります。 したがって、目的の遺伝形質、たとえば耐病性がどの染色体の部分に導入されるかは最後になるまでわからないわけです。 また、このほしくないSnowfall遺伝子はバッククロスと言う方法で希釈していきますが、いわゆる倍倍希釈なので決してゼロにはなりません。 また、このバッククロスによって必要な遺伝子を落ち着かせるわけです。  こういった理由で伝統的育種を行ったものの遺伝子を調べると、導入した耐病性などの遺伝子以外の遺伝子でも交配に使った近縁種の遺伝子に由来する異なった配列のものがしばしば見つかります。 これらの異なった遺伝子の作用は良くわかっていません。 ただし、このバッククロスは目的遺伝子を安定化させるため遺伝子組換えの場合も行われることも良く知っておいてください。ー>遺伝子組換え作物の場合 および伝統的育種の原理を参照してください

 例をあげると当研究室では、エンドウの品種におけるアピラーゼという主要なタンパク質の遺伝子の構造を調べていますが、グリーンピース(あのGreenpeaceではない)の系統とキヌサヤエンドウの系統ではかなり塩基配列の違った部分が見出されます。しかもエンドウは自家受粉であるにもかかわらず数種類のことなる配列が同じ品種でも見られます。もともとこれらのエンドウは明治以降いくつかの共通の親から育種されており種変異とは考えにくく、育種過程で取り残された”Snowfall 遺伝子”のひとつではないかと見られます。 なお、このタンパク質に関係する形質は分かっておらず(だから当研究室で研究しているのだ!)見かけの形質的にはこの遺伝子が混合していることの区別はまったくつかず育種親に由来するものがそのままバッククロスで除かれずにのこっているものと考えられます。 しかもこの酵素はラットに対して強い免疫作用があるのでひょっとするとアレルギーの原因になるかもしれません。 すなわち目的遺伝子を絞らないで”Snowfall”的に導入することを前提としている伝統育種では、わからない形質を選抜できないため、バッククロスでこれらの不要遺伝子をすべて取り除けない宿命があることを知っておいてください。 しかもこれはあたりまえのことなので、なにかと関係していることがわからない限り異なる遺伝子が残っているだけでは論文にもなりません。

  伝統的育種のもうひとつの方法は突然変異育種です。 これには自然の枝変わりと人為的な突然変異の誘導があります。 自然の枝変わりとしては、イヨカン、ウンシュウはじめ各種カンキツ類、ネクタリン、アマガキおよびイモ類、トウモロコシ、イネ、麦類など数多くあります。 交配育種より数が多いかもしれません。 地方種といわれるものもこの類に属するものがたくさんあります。 これらは染色体のどこか、そしていくつかわからないけど遺伝子が変異しているわけです(だから形や味やいろんなことが違う)。 人為的な突然変異はガンマ線や毒ガスなどをもちいて誘導し希望のものを選抜します。 交配できるものでは先に述べたバッククロスを行ったりします。 この場合もどの遺伝子がどうなったのかどの程度安定なのか、未知のものがないかは調べられません。 どのぐらい余計な変異で生じた”Snowfall"変異があるかわからないまま皆さんは食べているのです。

   いずれにしても、伝統的育種においては多くの場合、導入した耐病性などの遺伝子の産物の安全性や雑草化などの厳密なチェックは行われないのが普通です。 伝統的育種においては、いわゆる同質性、すなわち導入した遺伝形質以外に変化はないということが中心となり、導入した遺伝子産物の正確な毒性などの化学データ‐はほとんどないと言ってよいでしょう。 このようなものに関して誰も長期摂取の影響など調査していないのが現状でしょう。2000年に及ぶ大豆の栽培・育種の歴史において今ごろになって女性ホルモンのホモローグ(類似活性物質)であるイソフラボンが発見されたり、肉を食べることが健康にいいことだと思っていたらコレステロールや中性脂肪による心臓病やガンの危険性が明らかになったりしています。霜降りの強い牛の育種は大変健康によくないといわれており、米国などではこのような脂肪の多い肉は健康に害があるときらわれます。未知の物質の生成についてのリスクは伝統的育種のほうが低いという保証はありません。 実際には、従来育種品で健康被害や中毒が認められた場合、食品衛生などに基づいてその時点での対応が普通であることはよく知られていることです。コレステロールなどは、その健康被害について単に情報が流されるだけです。

  このような通常育種における宿命と限界の安全性については、一般には知らされていない重要な情報でありほとんどの皆さんはご存知なく、ただ安全だと思いこんでいるのでしょう。 よく調べていくと、ワビラビやキャベツやアルファルファに含まれる問題物質のせいで健康をすでに害していたが、誰も調査しなかったからわからなかったということになるかもしれませんね。 伝統的育種の原理もぜひ一度目を通しておいてください。

 遺伝子組換え作物の場合

 もともと、1でのべた通常(伝統的)育種の宿命と限界を乗り越え、より安全で確実な育種法として30年以上も前から精力的に世界中で研究されました。 この遺伝子組換え育種においては通常育種法の評価と、基本的には同じですがはるかに厳密に行われます。特に、遺伝子の構造と産物を明らかにしてから組換えることが必須であるためこれらの性質を詳しく調べることができます。 たとえば、実際の作物中では微量しか生成しないため毒性試験などとうていできないようなものでも、実験的に大腸菌などに大量に作らせて調べることができます。 したがって、この評価が適切に行われれば通常育種にくらべ、リスクをより正確に把握することができ、安全性が高いといえます。未知の物質の生成についてのリスクがあることは伝統的育種より低いと考えられます。 遺伝子組換えにおいては既知のもので性質のわかった必要なごく少数遺伝子のみを導入するためです。 病害虫に強い組換え作物の場合は病害虫によるカビなどの感染による、アフラトキシンなどの含量が1/10以下ときわめて低いというメリットもありますーー>組換えトウモロコシは健康食品

  また、上記の伝統的育種の場合にも述べたように、遺伝子を組換えるまえの作物と交配するバッククロスという方法を適用し、組み換えた遺伝子の安定化を行います。 導入した遺伝子はわかっているのでそれにおける変異はすぐにわかります。

 

 . 食の安全性は総合的に考えるべきである

3−A.  すなわち、従来品種がもつリスクにくらべて遺伝子組換え食品が持つリスクが本当に大きいかどうかです。この問題を考えるときはリスクと不安は別物だと言うことを十分認識しなくてはなりませんが、世間一般にはこれらを意図的に混同し集団ヒステリー的に不安をかき立てる著書も散見され注意が必要です。 実際に健康に与えるリスクは先のコレステロールや中性脂肪、イソフラボンや、豆類に多く含まれるO157毒素に類似した毒素(リシン)、貝毒、フグ毒はじめ食品ではありませんがタバコなどのほうがはるかに高い”確実な”リスクをもっています。 具体的に申しますと、組換え大豆が危険だからと大豆の摂取をへらしてかわりにタンパク源を日本の肉類に求めたとすると、間違いなく心臓病などの循環器系の病気や特定のガンの罹病が増加すると確実に予測できます(確実な予測、すなわち予言)。 これは、リスクでいうと100%です。現在までの動物実験などの結果をみても組換え大豆にこのようなリスクがあるとはとうてい考えられません。 また、日常何の問題もないと信じていたものが研究により一転して安全性が疑われることもあります ーー>たとえばキャベツやナタネ類製品(食用油など)とスナック食品は直ちに厳格な安全審査を実施すべきです

3−B  組換えとうもろこしのBTトキシンについてはすでに組換え以前のだいぶ前から生物農薬としておもにキャベツやハクサイなどに散布されており、皆さんの口にはいるのは今に始まったことではありませんがこれで健康を害したとの報告は聞いたことがありません。この散布は製剤のみならず長期にわたって残存し毒素を生産しつづける生きた菌体も意図的に使用されているのです。私も、10数年前ある方から蚊の駆除のために川にBTトキシン生菌菌を住み着かせるという計画に協力をしたことがあります。このように”安全性が確認”されているから組換えの材料にしたのです。

3−C  トウモロコシの場合は組換えとうもろこしを使わなければ、従来どうり多量の農薬散布で収穫を維持するだけです。 この農薬自体は明らかに害があることがわかっています。農薬残留量の数値はどこにも表示されておらず、しかもデータ―を入手することすら困難です。おそらく、無用の不安を与えるというのがひとつの根拠でしょう(消費者には判断力がないと決め付けられている?)この農薬残留の安全性は確認されてはいるとはいうもののこの農薬残留に対するリスクと組換えトウモロコシのもつリスクとどちらが大きいかがここでは主題となるべきです。

3−D もし、使用農薬量、種類および残留量の表示ならびにアフラトキシンなどのカビ毒などの含量も義務づければ消費者は組換えをとるか農薬をとるか自分で判断するでしょう。 今の組換え作物は消費者にメリットがないというのは間違いです。 また、遺伝子組換えの場合、アレルギーを起こす物質やソラニンのような有毒物質の存在や量を徹底的に調査し評価するので、由来の表示されていないものにくらべるとはるかに安全なのです。 また、作物は栽培や貯蔵の仕方によってこれら有害物の量などが変化するのですが、遺伝子組換えの場合はこれらもチェックされるのです。 以上のように冷静にみると現在の世間での組換えトウモロコシをめぐる議論は極めて視野が限られており、たまたま関心を持ったときに入ってきた情報のみでおこなわれていることがわかります。

4−組換え過程で大腸菌を使っているから汚い?−−>抱腹絶倒の偏見の始まり、気になる方は必見

5−有機農法とヨーロッパの食糧戦略-その物理的基盤

  組換え遺伝子の産物が持つ特性

A 遺伝子組換え産物はPCBやダイオキシンなどの代謝不能物質とはまったく異なる。

  一部の議論にタイトルのような誤解(時に意図的)があるのが残念です。組換えた遺伝子の産物は生物の作り出した自然物であり、本質的に代謝可能であり生分解性です。特に、組換え作物などに用いるものは代謝分解しやすいものばかりです。 遺伝子自体をPCBやダイオキシンのような公害物質と勘違いしている人もいますが、遺伝子は細胞の営みを借りなければ自然界においては絶対に増殖、維持できません(遺伝子と細胞の関係について当研究室のホームページに詳細に記述してあります)

6−B 食品は決して特定のものばかりを摂取するものではない

これは以外に重要なことで、たとえば毎日何キロものリンゴの皮ばかり食べていたら、農薬中毒になるかもしれませんが通常の摂取ではまったく問題になりません(よく学生からそのような質問をうけます)。皮ごとかじりましょう。 このようにひとつのことだけを取り出すのは決して賢いとはいえません。 日本人が長寿なのは、多種類の食品をとって、特定の食品が起こすかもしれない未知の危険を分散していることも関係しているといわれます。アルファルファやワラビを毎日、なべに何ばいも食べたらガンになるでしょうけれども、そんな食べ方、誰もしないでしょう。 

 

食品の安全とは? −食品表示のありかた 

1-D ”安全である”ということは”危険でない”ことを証明することですが、論理的に”ない”ということは証明できません(地雷のある)。 したがって、かわりにどのぐらい”ない”かということともたらす利益の大きさでもって”危険でない”すなわち”安全”を判断します。 つまり、”安全”の基準は連続的です。ちなみに”飛行機は安全な乗り物であるか?”と皆さんが聞かれたらいろんなことを考え、また列車や自家用車と比較したりして各自で条件をつけたりしがら独自に判断を下すでしょう(専門家の判断はたいてい”安全”です)。 また、緑色になったジャガイモは食べて安全か?と問われたら、食べたけど大丈夫とかいや危険とか、量が少なきゃいいんじゃないのとか考えて判断するでしょう(専門家の立場は”危険”です)。 安全審査を合格した組換え作物は毒性を証明できないので”安全”判断がくだるのが自然です。 ではダイオキシンやPCBはいかがでしょうか。安全審査をしたら”あるレベル以上で危険”が証明できるから”そのレベル以下は”安全”となります。これはいいかえればPCBやダイオキシンであっても存在することはいわば”許されている”のです。 われわれは冷静なときは常にこのように”安全”を判断して行動しているのです。カニの煮汁のカドミウム、大豆などの水銀、ある種の食用貝の内臓のヒ素、梅やアーモンドの青酸、タバコの煙の放射能などなど、許容以下としてあるいは注意せよということで身の回りに許されている(問題となっていない)毒物の代表例です。

7−A 伝統的育種こそ、目的遺伝子とともに無用な遺伝子を大量に導入する、あるいは変異させることを前提とし、伝統的育種は多くの”SNOW FALL遺伝子群を宿すーー従来の交配育種品がなぜ無定義に安全なのかと問うと、従来からの安全な方法であるから安全だといわれますが、よく考えてみると、結果の評価を問うているのに、方法は安全だという自己撞着的回答(わかりやすくいえば答(安全)を前提として答(安全)を誘導する)であることがわかります。 ”安全な自動車にのれば安全です”というのとよく似ています。 また、従来育種は遺伝子組換え育種と比較するとき、しばしば”神格化”されます。こんな議論は今までやってきたことは正しいというようにしか聞こえませんーー>伝統的育種における偉大な錯覚

7−B さらに、伝統的育種は交配育種だけではありません。交配育種が使えないものも多く、また、手軽であることもあって枝変わりや遺伝変異、倍数性育種など種種の突然変異や染色体異常を伝統的に用いておりこれらは”交配育種”ではありません。たとえばウンシュウミカンはじめカンキツ類、カキなどの樹木、ヤマノイモはじめイモ類などの花の咲かないものや結実が難しいものなど身の回りにたくさんあります。 バナナは染色体異常のひとつである3倍体であるといわれています。さかなでは天然に見つかる大型のイワナなどもこのたぐいです。なかには、由来がはっきりしないもの、たとえばイヨカンなどもあります。 NGOの言い分によるとこれらも”自然交配”でないから危険ということになります。

7−C このように考えると消費者に明確な判断基準のない”遺伝子組換え使用”という公的表示は”ちまたのうわさによる判断”すなわち”風評”を期待したいわば”不当表示”で、公的表示義務制度が取るべき道ではありません。 PCBが少しでも検出されたら”PCB含有”、あるいは上記の毒物たとえばモモに”青酸含有”と表示したらどうなるでしょう。すくなくとも、無条件に”危険”であったら使用してはいけないわけで、危険でない(危険であることが証明できない)レベル以下であれば表示しないか”安全”表示をおこなうのが通常です。 まして、安全審査をうけて合格した遺伝子組換え食品は”遺伝子組換え安全審査合格”と表示すべきです

7−D もしあなたがあるところに引越しをして、”きみは見慣れないから危険かもしれないので、周りの人が判断材料にするから名札をつけて(名前を表示して)出歩いてください”といわれたらどうしますか。おそらくいやでしょう。 それは、あなたがなにか本当に悪いことをする(したい)からですか。 それとも、名札の名前をみて他人がどう判断するのかわからない、すなわち回りの判断なるものの規準ややり方、内容あるいは意図がわからないからとか正当な判断をされないかもしれないから、あるいは名前だけでどうして正しい判断ができるのだと疑問に思うからいやであるということではないでしょうか(人間の場合では一言で”プライバシー”と総称しますが)。

7−E 遺伝子組換え食品は健康食品

 

 

U 生態系への影響

この問題は食品の安全性以上に総合的な広い視野から見る必要があります。昆虫の生態に関する資料も参照してください

1 現代の生態系のかく乱は人間の生産活動と生活圏の拡大が最大の原因である

A−1−A  沈黙の春”はまだ終わっていない

 身辺をよく見回してみると、年配の方ならキャベツ畑からモンシロチョウが消えて久しいことに気づくのではないでしょうか。 これは、組換えのためではなく農薬散布のためです。 昆虫などへの致命的影響は農地や山林への農薬の散布です。このリスクは100%です。実際に普通のトウモロコシを栽培してみると驚くほど多量の農薬を散布しないとまともな収穫は望めないことがわかるでしょう。すなわち、農薬をこのように用いると確実に生態系を破壊できます。

A−1−B BTトキシンがもつ昆虫のフローラへの影響を心配する人が多いようですが、以上にくらべると組換えトウモロコシのもつ生態系へのリスクはゼロに近いといえるでしょう(昆虫の生態に関する資料参照)。すなわち、BTトキシンを組み込んだトウモロコシではこのように確実に生態系を破壊できません。 むしろ、農薬をあまり必要としない分、蝶も舞うようになるでしょう。 うそだと思うならキャベツとBT-トウモロコシを混植して実際にやってみてください。 ちゃんとモンシロチョウが舞いキャベツが虫食いになる一方でトウモロコシは農薬をへらしてもですくすく育つことうけあいです。 ただし、最近の若い方は、キャベツ畑にモンシロチョウが乱舞していないのが普通だと思ってしまっていますが、これのほうが問題です。沈黙の春

A−1−C  

    従来からの生態系破壊の因子は、農耕、農業生物を含めた移入生物、そして乱獲である。―そして、これらは今後も主たる要因でありつづける現在生物種の減少や生態系の破壊に手を貸しているのは、組換え生物ではなくあなた自身なのです。西洋タンポポやセイタカアワダチソウは私たちの胃袋を満たすために輸入した穀類に混じってあるいは観賞用として外国から移入され日本の気候のもとで原産地よりも繁茂し日本の伝統的生態系をかく乱しました(当ホームページ、生物のトピック参照)し、観賞用に持ち込まれた植物や動物が野生化して生態系をかく乱しているのも皆さんよくご存知でしょう。 これまでに800種以上が日本に侵入しそのうち半分ぐらいが帰化しているのです。 きょうもあなたの庭先から環境へと漏れでているのです。 淡水魚のブラックバスなどはその適応力と繁殖力とかく乱性が、逆によろこばれてブームなっているではありませんか。しかも日本の自然環境の変遷をふまえ、この伝統的生態系の破壊者であるブラックバスを新しい生態系創造者として受け入れるべきだという声が強く、これに対して、伝統的生態系保護を訴える人々のほうが窮地に追いやられています。ニュージーランドなどで移入家畜に滅ぼされた生物が多くあることもご存知でしょう。また、身近な生物に関する基本的な問題は本ホームページ(水資源沈水性植物沿岸海洋生物の飼育)にも記述があります。さらに、日本は被害者ばかりではありません。日本のヒトデが船の潅水に混じって外国に移動し繁殖して生態系をかく乱しているケースもあるのです。 例をあげればキリがありませんが、このような従来からの生態系のかく乱のリスクーこれらもまた100%であるーはよろしいのでしょうか。 総合的視野は日本人の苦手とするものですが、今後ともこれらの要因が生態系へのかく乱の主因でありつづけるでしょう。ー>生物多様性の基本的考え方について その一方において農業においては薬剤を使ってでも病虫害防除しなくてはならず、それを怠ることは人間の健康を保つ上において重大な犯罪行為にほかならないのですー>オオカミ男とライ麦

”帰化”という感動的な名称=雑草化に関する資料

・保育社 原色大図鑑 理学博士 長田武正 著 53 原色 日本帰化植物図鑑 512page

・ニューサイエンス社 No.17 帰化植物100種

 

A−1−C  これらにくらべ現在の安全評価法で評価される組換え生物がこれら伝統的要因をしのぐリスクをもつとお考えでしょうか。今後、急速な地球温暖化と人口の爆発により、地球環境は恐竜絶滅の時代をしのぐ激変をとげつつあります。 これに、生物の自然進化がついていけないことはもはや明白な事実です。生物種の著しい減少がその証拠です。 この環境の激変は人類によるものであり、したがって人類の手によって生物の進化を助けなくてはならないのです。

A−1−D  遺伝子組換え生物も生物であり、それが単独でもつ生態系かく乱のリスクは現在の安全評価法や導入遺伝子の制限により、従来からのかく乱要因がもつリスクよりはるかに低いと考えられます。 しかも、その環境にとっての新生物を導入するにあたり生態系への影響を評価し遺伝子レベルで長期の将来予測を行うという手法は従来のやり方とは格段に進歩した革命的といえるものなのです。

 

V 遺伝子組換えに関係した情報提供のあり方の問題

B-1‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ さらに、日本でのこの問題に関する情報提供や報道にも問題点があります、少し以前に組換えトウモロコシの花粉で蝶が未知の原因で死んだと大々的に報道されましたが、事実の解釈はかなり違います。オリジナルの論文をちゃんと読めばわかることですが、このトウモロコシの花粉で蝶が死んだのは未知の物質ではなくBTトキシンです、自然界では絶対に生じないような多量の花粉を蝶の幼虫の食草に真っ白になるほど塗りつけて強制的に摂取させた結果なのです。 それをもう、鬼の首でもとったかの大騒ぎ。 こんなばかげた実験で危険性が証明できるなら他にいくらでもできます。 たとえば、タバコの抽出物を虫に塗り付ければ、はるかに少量で短時間で、しかも無差別に虫を殺すことができますし、タバコを池に投げ込みコイに食わしたり、小さな海辺のタイドプールに灰皿いっぱいのすいかすを投げ込めばコイやたくさんの小魚やほかの生物たちがしんでしまいますので、自生地以外ではタバコの栽培や育種そして流通をしてはいけないという結論が簡単に導けますが、皆さん如何でしょうか。また、タバコはとっても危険で喫煙および販売を即時中止にすべきでしょう。 それとも、いままでやってきたのだから害とは認められない、いや既得権だと主張されるのでしょうか。 とにかく、捨てられた煙草の吸殻の近くの生物たちは死に直面するのです。 それに、豊かな食料品のかげであるいは美しく手入れされた街路樹や庭の草花の陰で多量の農薬散布のせいで(-−>続き恐るべき農薬使用の実態)、どれほどの動物や植物が死んだり絶滅しているか考えたことはおありでしょうか

B−2   さらにもうひとつ。 本日(1999・9・20)見たのですが、見出しに北米では多くの植物が遺伝子組換えのせいで絶滅しかかっていると出ていましたが、内容をよんでみると、なんと、野菜などの作物の話で要は栽培されるのが単純化するからということで、これはそもそも組換えに限らず農業や都市化やリゾート開発などがもつ本質的問題で、こんなものは政策的に遺伝資源保存をすればいいことです。 総数では米国は世界最多の絶滅危惧種を持っていいるそうですが、面積が広いことと開発の歴史が浅いことをを忘れてはいけません(これから絶滅が進むという意味)

B−3−Aヨーロッパでは生物はさんざん絶滅させられ、新たに絶滅させられそうなものはあまり残ってはいないでしょう。また、日本は面積あたりではおそらくトップクラスの植物絶滅国でしょう。 ヨーロッパでは歴史的にみて、もうかなりの破壊と絶滅が遺伝子組換え以前にすでに起こってしまっていると考えられます。

B−3−B 野草のみならず栽培種で見かけなくなったものなどかなりあります。野菜などは輸入種を含めてハイブリッドになったりして伝統種がすたれたものがかなりあるということを同時に報道すべきではないでしょうか。近年のハイブリッドの導入や品種のめまぐるしい盛衰、野生での絶滅により、すでに一定の研究材料の入手がわれわれ生命科学者にとって不可能になることがあるほど状況は危機的なのです。例を申しますと、本研究室の主要材料のアラスカエンドウはすでに日本での栽培はなくなり種子は日本では入手できなくなり、皮肉にも米国に頼っているのです。組換え育種の推進のためには、その安全評価のためにも一定の品種の確保と遺伝資源が適切に管理されることが前提なのです。日本ではこのような調査はなかなか進みません。ーー>絶滅危惧種の急増へつづく

W 遺伝子は平等である このように見てくると、遺伝子組換え育種は広範な種からの遺伝子をターゲットにできるという今までにない革命的特徴をもつために、かえって遺伝資源の保全(生物の保護)を行うことが必須になっていることを忘れてはいけないことがわかるでしょう。そして、遺伝子組換え育種への関心が高まるほど生物種の保存の意義と意識が高まるはずです。とりわけ、そうでもない限り美しくない生物たちは存在すら忘れ去られてしまう危険性があるのですーー>(水資源沿岸海洋生物の飼育参照)。交配育種ではどのようにしても交配できない生物は本来無価値であるため、関係種以外の保全の意義は見出しにくく生物保護の意識が世間に高まるとは思えません。

C−B 従って、現在のような世間での遺伝子組換えに対する議論では、結局遺伝子組換えの追放を達成してしまった後、人々の心から遺伝資源への関心が薄れ再び”美しくない役に立たない生物たち”の絶滅が加速する可能性さえあるのです。


D−A 以上をお読みになってなおかつ解消されない危惧を依然もたれるかもしれませんが、それは”不安”というものでしょう。これを解消するにはさらに地道な研究と証明と情報交換が必要でしょう。また、当ページでは、ほかのも危険だから組換え生物の安全性はチェックしなくていいんだといっているのでは決してありません。あくまでも適切なことをやった上でのことです。 ところで、”適切”とは無限の要求ではありません。あくまでも、バランスの問題です。日本人には苦手ですが、身近な事柄を総合的に考える習慣をつけましょう。そうすることにより、どのように組換え生物を評価していったらいいか、生物としての彼らを受け入れるにはどうしたらいいかが見えてくるでしょう(あなたへのチャレンジー>禁断のテーマ)。 

D−B  そして最後ですが、いくら勉強してもやはり遺伝子組換えは危険でよくないというお考えのかたがおられると思いますが、それはそれでかまわないのです。 ただし私から、生物学者の一人としてひとつお願いがあるのです。それは、遺伝子組換え生物や食品の安全性や生態系への影響をご自分なりに猛勉強されたわけですから、その知識や見識を最大限に生かし、それらを実践することによってまず身近の生物や環境をいつくしみ、そして将来は日本の、いや世界の環境や生態系の保全、生物の保護、食糧やゴミ問題の解決にどんどん取り組んでいただきたいと願う次第であります。このような方々にも私は援護を惜しみません。このような主張と実践の共存により、多くの資本と英知を結集した遺伝子組換えの是非論が無価値に終わるのではなく、人類のより良い生存の環境の創造に貢献していくことができるのです。

ー>恐るべき農薬使用の実態と地球規模の環境汚染

ー>さらに奇妙な自己矛盾

ーー>トウモロコシのパラドックス

ーー>伝統的育種における錯覚

--->遺伝子組換えの安全性ホーム

ーー>キャベツやナタネ類製品(食用油など)とスナック食品は直ちに厳格な安全審査を実施せよ

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ヒット カウンタ 20000115