”食経験”という名の無認可大規模人体実験ー伝統は危険を認識する手段か

 伝統育種は長らくの食経験に基づき危険が淘汰されているから安全ということがよく言われる。  反GMOの方々は本当にそう主張していいのだろうか。 そんな風に引き合いにだされたら伝統育種も困るのでは。 まるで安全な自動車を作ってきた技術だからそれを使った製品は安全で安全装置やブレーキが要らないというようなもの。 しかし、GMOに対しそこまで言われたからには反論させていただきます。 伝統育種と遺伝子組換え育種のコンセプトの比較

  伝統や”経験がある”という言葉はしばしば無知と同義である。 伝統的育種の結果の安全性は大衆を実験台にして評価され、まずいとわかった時点で削除されることもあるが、そのままのこともある。 食べて死ぬ危険性があるかどうかの評価にもならないことがある。 次の身近な実例を考えてみよう。

1. ナタネ油が北米で食用として認可されたのは1985年、わずか15年まえのこと。 日本や中国では古くから食用され食経験はあったのだが、米では有害物を含むとして食用が許可されなかった。 伝統的なナタネ品種自体にエルシン酸(心臓病)とアリルからし油誘導体(甲状腺腫、生殖障害)、特に前者を多くふくむからである。 したがって低毒品種の育成と製油プロセスの改良が食用に供するに不可欠であったわけである。 この結果、プロセスの改良とダブルローといわれる低毒性品種であるキャノーラの登場をまつ必要があった(油脂28巻(4)p87、1985他)。  確かに毒性の高い伝統品種は食経験されているがその悪影響は調査しようにも過去のことでデーターにも乏しくさっぱりわからず安全評価できない。  さらに、低毒性のキャノーラは新しい品種で、わかっている毒性以外に不明物質による障害がないかは不明で、しかも15年ほどの食経験しかなく次世代などの世代を超えた影響については未評価である。

2 以上のうちアリルからし油誘導体はナタネはじめワサビ、大根、キャベツ、カリフラワーなどアブラナ科の辛味成分で、ネズミに対する致死性毒性はLD50(半数死亡)で330mg/kg体重で普通のネズミだと数十mgが致死量となる。 殺虫剤であるタバコのニコチンが250mg/kg体重程度であるから、ほぼ同様の急性毒性をもつ事になる。多量にワサビを食べればヒトでも死ぬ可能性もあるということである(ヒトでは数分の一量が致死量と考えたらよい)。さらにこのアリルからし油は長期にわたる摂取で甲状腺機能障害や甲状腺腫をおこす。 人への影響ははっきりしないとはいうもののアブラナ科の多偏食は避けるようアドバイスされている。

 他に同様の例は、稲、ダイズ、ソテツ、ピーナッツ、麦類など枚挙にいとまがなく、順次、提示していく予定である。 さらに毎年姿形だけの新品種が多数世に送り出されている。 伝統は安全の代名詞ではないし、育種とその結果の安全性は別物である。 これだけから見ても、食経験があるから安全というのは暴論というより空想であることがおわかりいただけたであろう。伝統育種で安全審査はいらないということの理由を、しいていうならば大衆を実験台にしあとで調べることを今まで許されてきたから今後も既得権として同じようにやっていくというぐらいだろう。

もどる  育種ホーム ライフサイエンスホーム  .図書館ホーム  研究室ホーム