SBP


図ー1  SBPがストレプトアビジンに結合する模式図

  

種々の生物に含まれているSBPは、ストレプトアビジン・アルカリホスファターゼ(ストレプトアビジンを結合した酵素)と強く結合することからSBP(ストレプトアビジン結合タンパク質)と呼んでいます。 植物や動物に存在するSBPは、いくつかのビオチン結合タンパク質を含むと考えられますが、 分子量とサブユニット構造や部分アミノ酸配列のデータなどから、アビジン・アルカリフォスファターゼを用いた場合に強く検出されるミトコンドリアのピルビン酸脱水素酵素(羽地ら 1988、1991)とは考えにくいと思われます。これらのSBPはつぎのような分析上の特徴を持っています。

1)他のタンパク質に比べて検出感度がかなり高くしかも検出が容易なこと (文献2,3)

2)動物・植物、及び多くの微生物など、生物界に広範囲にわたって存在すること (文献3)

図ー2.ブロットしたタンパク質中のSBPのストレプトアビジンアルカリフォスファターゼによる検出例

左図:AはストレプトアビジンアルカリフォスファターゼのみによるSBP検出(植物と脊椎動物)
Bは抗体によるアクチンとチューブリンの検出を併用した他の生物の例。 ヒトリンパ球からも魚類と似たパターン(右図)で検出される(文献3)

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右側の図は、マダイ骨格筋(魚肉部分)からアビジンカラムを用いて抽出したSBP群である。レーン1が分子量マーカー、レーン2がタンパク質バンドの検出(SDS-PAGE)、レーン3がビオチン化(SBP)検出である。レーン2と3の両方に検出されているものが、ビオチン化酵素で、レーン2にしかないものが、ビオチン化のないタンパク質である。 タンパク質のアミノ酸配列解析等から、121kDa、PC; 76kDa, MCCC1; 72kDa, PCC1; 56kDa, MCCC2とPCC2(非ビオチンサブユニット)と同定された(文献2)。 ほかに:43kDa,アクチン; 209kDa、ミオシンがレーン2に検出されている(ビオチン化はない:レーン3参照)。 

 

以上のような特徴を持っています。この特徴を利用して、例えば、現存する多くの生物の進化の過程を考えるとき、このタンパク質の分子量や構造を指標として使うことができます。当研究室はこの見地から、40種類以上もの生物のSBPの分析や抽出を試みました。その結果、ヒトと魚類などの異なる生物種間でいずれの場合も分子量のよく似たSBPが検出されました。また、植物の進化分類学上、これまで長く信じられてきた進化の過程を見直した最新の学説に一致する実験データを得ることが出来ました。他にも、SBPを農作物や家畜等の系統の分析および品種改良等に応用することが出来ると考えられます。  さて、当研究室では、SBPの分子的な特徴についても、研究を進めています。SDS−PAGEの結果はアラスカエンドウ・トウモロコシ78kDa、イチョウ73kDa、ヒト71/75kDaなどがわかっています。一部の生物については分子量の大きく異なるSBP(HSBPやLSBP)が検出されています(ヒト150kDa等・・・)。

図ー3  SBP類の分子量分布とクラス分類

SBP類の各種生物における分子量分布を調べたところ下図のように三つのクラスに分かれました。

 また、当研究室ではSBPがストレプトアビジンやアビジンと結合することを利用したカラムによる精製法を確立しました。このアビジンというのは卵白などに含まれる塩基性の糖タンパク質の一種で、ビオチン(ビタミンH)と強く結合する性質を持っています。このことからSBPの構造の中にもビオチンが含まれることが予想されます。これまでに知られているビオチン結合タンパク質には、電子伝達系に関わる重要な酵素などがあります。同様にSBPについても、生命活動に重要な役割を果たすタンパク質であると考えられます。そこでエンドウよりSBPを多量に精製して分子構造解析をすすめ、また、電子顕微鏡を利用してSBPの細胞内での分布や機能を探る実験を行っています。
 

  その後、SBPのぺプチド断片をプロテインシークエンサーにより、部分アミノ酸配列を得、この配列をもとに国立遺伝学研究所のデータベースをもとにホモロジー検索を行いました。 この結果、このタンパクは植物においては細胞内の膜ー細胞骨格複合体にあるのではないかと考えられます。
  現在行っている実験は、得られたぺプチド断片をもとにプライマーを合成し、cDNAクローニングを行っていて、同時にヒトのリンパ球のSBPのタンパク質解析をすることにより、エンドウのSBPとの比較をすすめています。   

  最近の研究によれば、植物での78kDa付近のSBPはメチルクロトン酸ーCoA炭酸化酵素のビオチン化サブユニット、ヒトを含む脊椎動物ではメチルクロトン酸ーCoA炭酸化酵素とプロピオン酸ーCoA炭酸化酵素(propyonyl CoA Carboxylase)のビオチン化サブユニットであることが分かりました。 当研究室での最近の研究で魚類では初めてPCCタンパク質のビオチン化および非ビオチン化サブユニットが分離・同定されましたし、分子量が150kDa付近のHSBPはピルビン酸炭酸化酵素(Pyruvate carboxylase, PC)であることがわかりました(Abe et al., 2004)。 これらの酵素は細胞核のDNAにコードされミトコンドリアに輸送されるものですが、細胞質にも細胞骨格などに結合して存在していると考えられています。
 

 (文責 高瀬徳子 ttakase@agr.ehime-u.ac.jp
 
1.ヒトでのSBPの研究ー  Human Biotin-Containing Subunit of 3-Methylcrotonyl-CoA Carboxylase Gene (MCCA): cDNA Sequence, Genomic Organization, Localization to Chromosomal Band 3q27, and Expression Obata,K., Fukuda,T., Morishita,R., Abe,S., Asakawa,S., Yamaguchi,S., Yoshino,M., Ihara,K., Murayama,K., Shigemoto,K., Shimizu,N. and Kondo,I. Genomics 72, 145-152 (2001)  http://www.idealibrary.com/links/doi/10.1006/geno.2000.6366 ーAbstract   遺伝子

2.魚類でのSBPの研究(魚類MCCC, PCC, PC)ー Isolation and identification of 3-methylcrotonyl CoA carboxylase cDNAs and pyruvate carboxylase, and their expression in red seabream, Pagrus major organs. Shunnosuke Abe, Chhoun Chamnan, Kenichi Miyamoto, Yasutaka Minamino, and Makoto Nouda (2004).  Marine Biotechnology 6(6): 527-540

3.広範囲の生物種におけるSBPの分布- Distribution of actin and tubulin in the cytoskeletal fraction from a variety of plant and animal tissues. Abe S., Ito Y., Doi H., Shibata K., Azama K., and Davies E. Memoir of College of Agriculture, Ehime University (1996)41(1):1-10.

2005/06/12


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