細胞膜電位と電気生理学的パラメーター


  植物プロトプラストの膜電位についてはもとの細胞と大きく異なり、膜電位差をほとんど失っているというデータもあるガ、我々の、注意深い研究により、プロトプラストの分離や膜電位測定を注意深く行うと、元の細胞と同等の膜電位を示すことが明らかになっている。 次の図は車軸藻プロトプラストの膜電位の記録を示す。電極刺入とあるところでガラス微小電極を通電刺入法によりプロトプラスト内に差し込み細胞内電位の記録を開始した。電極刺入時は0.1mMKClを含む外液であったが、その後10、30、および100mM とKCl濃度をあげていった。0.1mMKClではー80mVであった膜電位がKCl濃度の増加とともに脱分極し(正電位に近づく)100mM ではほぼ0mVとなっている。つぎに、0.1mM KClにもどすとほぼもとのー80mVにもどっている。  Naイオンに対してはこのような電位変化はあまり見られない。

次の図はプロトプラストが電気刺激によって発生する活動電位の一例である。

 

次の図はプロトプラストおよびインタクト細胞(細胞壁がある)のKCl濃度に対する静止膜電位の依存性を示す。 インタクト細胞とプロトプラストの膜電位はどちらも同様の負の電位を示し、Caイオン濃度が低ければ両者の差は小さくなる傾向がある。共存カルシウムイオン濃度にもよるが外液KCl濃度が1−3mM以上で約 -48mV/decade(10倍の濃度変化に対し)の電位変化を示し一方でアニオンの種類や価数には依存せず、Kイオンの内外の濃度差によるネルンストの平衡電位であることがわかる。この領域では、インタクト細胞とプロトプラストの膜電位の違いが消滅する。1mMのカルシウムイオンの存在下では1mM以下のKイオン濃度に対して膜電位は依存しなくなりCaイオンに対しても膜は透過性があることが分かる。

 

次の図はKイオン濃度が低い場合(0.1mM)のインタクト細胞とプロトプラストの膜電位のCaイオン濃度に対する依存性である。この領域では、インタクト、プロトプラストとも約ー28mV/decadeの濃度依存性を示し、2価カチオンの濃度差に基くネルンスト平衡電位と同じ傾きを持つ。しかし、一価カチオン、特にKイオンの透過性が無視できないためこれらを考慮したGoldmanの式で近似される膜電位特性をもつ。この式を解くことにより、プトトプラストとインタクト細胞の膜電位の違いは、プロトプラストにおいてCaイオンの透過性がインタクトと比べて高まっていることが明らかとなった。このことは最初の図にあるようにプロトプラストの活動電位のカルシウム依存性が大きくなっていることとも合致する。このようなプロトプラスト化による細胞膜のカルシウムイオンに対する感受性の増大は本研究で明らかになったもので、カルシウムサイトの増加や感度や輸送の増大、膜の高次構造の変化などが考えられ、細胞融合やプロトプラストの細胞生理あるいはインタクト細胞における細胞壁の役割を考える上で極めて重要な知見である。

 

 

 

参考文献

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