ーー>分子細胞生物学の体系について

分子細胞生物学の説明 1998.7.16. 更新

  真核生物と呼ばれる動物や植物の細胞には高度に発達したネットワークがあります。下の写真は植物細胞の細胞骨格と呼ばれる細胞内ネットワークの一つであるF−アクチンを蛍光色素(ローダミンファロイジン)で染め緑色光で照射し発生したローダミンのオレンジ色の蛍光を観察したものです。このオレンジ色の蛍光にそって細胞骨格を作っているFーアクチンというタンパク質繊維があります。
このF−アクチンはマイクロフィラメント、MFともよばれます。 ほかによく知られた細胞骨格繊維系には微小管(MT)中間径繊維(IF)があります。次の写真をクリックすると高解像度になります。 

ここをクリックすると高解像度になります

  1.   細胞骨格とは、細菌類を除くすべての生物の細胞質の基本的構造で、ちょうど通信設備や内外の環境のセンサーや報知器、エレベーターなどの運搬装置などを持った、しかも変形できるゴム繊維製の建物のようなもので細胞の基本的な働きの立体的な有機的な活動を可能にします。細胞小器官(オルガネラ)はこの建物の中にはまりこむことになります。
     

      遺伝子(DNA)はちょうどこの建物のなかの””という名前の図書館にある、生命の設計図と対処すべき問題の答を記した文献にたとえられます。ここで遺伝子が生命の根源を塩基配列という文字でコードするとすれば、細胞骨格はー図書館で読んできた文献の内容ーすなわち遺伝子の暗号を,タ ンパク質合成の場を細胞空間に配置し実在の生命の形に変換し活動させるものです。ゆえに、細胞骨格のことを3次元の遺伝子と呼ぶこともあります。また、このように遺伝子(DNA)が生命を形作り、活動させることを遺伝子発現と呼び生命研究の永遠のテーマといえます。我々はこのような生命に関する根源的テーマに対して、遺伝子と細胞構造の両面から常に創造的に取り組んでいます。

      このような取組みを分子細胞生物学Molecular Cell Biologyといい、これまでの分子生物学および生化学と細胞生物学を統合した、フロンティア領域です。本研究室はこのような研究を農学分野にもたらすために平成3年(1991年)に全国の大学に先駆けて設立された新しい研究室です。 植物を対象とした分子細胞生物学は動物に比べると少ないですが、植物という言葉を特に冠して植物分子生物学と呼ぶこともあります。 ー>植物における分子細胞生物学の特徴。

      また、当研究室で細胞小器官(オルガネラ)を最新の細胞観に基づいて分画するための細胞分画法である、CSB法が開発されました。上の写真のような細胞骨格を持つ植物細胞をすりつぶし、CSB法で細胞骨格の断片が抽出されました。(写真へ)

      一方、小胞体などの膜系成分(ミクロソーム)が細胞骨格やリボソームと結合して複合体を形成しCM−コンプレックスと呼ばれます。 これに関する本研究室でのパイオニア的研究成果が国際学術雑誌の表紙として採用されています。 この画分は従来より膜結合ポリソームと呼ばれているものと同じものです。   また、本方法によってトウモロコシのタンパク質顆粒が小胞体のみならず細胞骨格に結合しながら細胞骨格結合ポリソームにより形成されることを1991年に始めて提唱しました。このことは2年後にOkitaらやLarkinsらによって確認されています。また、本法を用いて他の研究者により、イノシトール代謝によるシグナルトランスダクション系が細胞骨格依存性であることやNPA(合成オーキシン)結合タンパク質が細胞骨格結合であることなどが明らかにされています。 従って、植物においては従来の膜結合ポリソームやミクロソーム画分に基いた研究は結果の解釈に注意が必要です。 

    さらに、我々は、リボソーム上でのタンパク質合成速度を直接測定することにより細胞骨格や細胞骨格ー膜複合体にリボソームが結合することによりin vivoでのタンパク質合成の一般的活性化が起こることを明らかにしています。 本研究室では、このような我々が独自で開発した方法や新たな発見・知識を活用して遺伝子発現という根源的なテーマに取り組み細胞骨格と遺伝子発現に関する分子細胞生物学的(分子生物学的細胞生物学)研究の基礎と応用を行っており、扱う生物は微生物・動物・植物の多岐にわたっていますが、エンドウ、トウモロコシなど植物が主体で無脊椎動物を始めラットなどの脊椎動物やマウス3T3やヒトリンパ球などの動物培養細胞も使います。細胞骨格ーリボソーム結合因子、やその他の細胞骨格関連の遺伝子発現調節因子の単離・同定やそれらの遺伝子のクローニングを経て細胞の動的な遺伝子発現のメカニズムなどの細胞の生産性の基盤やライフサイエンスの基礎研究、並びに人工細胞質の構築や細胞の動的構造をコントロールすることにより細胞の生産性を飛躍的に高め生物資源生産及び産業への応用をめざしています。また、細胞構造と遺伝子発現に直接関わる研究であり、ここでの成果は、トランスジェニック植物の作出による育種や有用タンパク質の生産などに応用できると考えられます。しかも植物を主に用いながら植物特異的でなく生物一般に関わるサブジェクトを研究しており臨床検査や医学上の応用もターゲットにしています。

     これらの研究においては、遺伝子組換え、遺伝子増幅、遺伝子クローニング、遺伝子塩基配列決定などの分子生物学的手法、リボソーム機能の解析やタンパク質等の単離精製、アミノ酸配列解析、電気泳動分析、ウエスタンブロットなどの生化学的手法、蛍光顕微鏡法、電子

    電子顕微鏡観察などの細胞生物学的手法、膜電位測定などの物理化学的手法などと様々な観察・分析機器を用います。

    我々のキャッチフレーズは基礎なくして応用あらずであり、常に教科書を自分達で作っていくことをめざしています。卒業論文のレベルでも国際学術雑誌などで通用するデータの作製や学会発表が可能であり、修士論文以上においては国際学術雑誌への投稿を目指して研究指導します。実際、本研究室の主要な論文や教科書の図などの多くは卒業論文、修士論文、あるいは博士論文の一部でもあります。

    専門外の方でも理解できるように努めています。研究室図書館にも用語等の説明がありますので本分野になじみの薄い方は参考にしてください。

    1. 生命科学、ライフサイエンスの基礎知識
    2. 細胞に関する基礎知識
    3. 分子細胞生物学研究室の最新の情報(研究成果、学生募集等)
    4. 研究生・大学院に関する情報
    5. 研究室紹介
    6. 研究テーマの紹介
    7. 研究室図書館
    8. 研究室データーベース
    9. 生命倫理
    10. 分子細胞生物学表紙

 

総目次